ワークスアプリケーションズの牧野正幸代表取締役CEO(最高経営責任者)
ワークスアプリケーションズの牧野正幸代表取締役CEO(最高経営責任者)
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 「日本企業のIT投資は約50%が不良投資となっている。新たに導入したシステムで得られる事業効率化のメリットやコスト削減効果よりも、システムを維持、運営するためのコスト増が上回っているのが現状。投資対効果(ROI)を明確にし、効果が出ないなら、たとえ評価が高くても“捨てる”という判断姿勢が重要だ」。ワークスアプリケーションズの牧野正幸代表取締役CEO(最高経営責任者)は3月22日、日経BP社が開催したIT Trend 2007の講演でこう語った。

 牧野CEOは、「日本企業が欧米と違いIT投資の恩恵を受けていない理由は、投資のプロセスにある」と指摘する。日本は欧米と同様に、IT投資の前にROIの見極めをしている企業は多い。しかし、稼働後に検証しているケースはまれであることが問題だというのだ。そして、「欧米企業の場合、どんなにうまくシステムが稼働しても、開発納期に間に合っても、開発コストが予定内に収まっても、利用者が高い評価をしても、効果が明確にできなければIT投資は失敗と判断する。時には責任を追及する。日本では効果の判断があいまいで、責任を問われることがない。これでは正しいIT投資の判断は難しい」と続ける。

 IT投資の効果が出ていない時に責任を問わない体制は、利用部門側にも悪影響を与える。利用部門はIT部門に対し、業務効率化を目的とした様々な改善要求を挙げる。しかし、「最終的な効果が出ているかどうかをあいまいにしていると、あっという間にITの過剰武装になる。見た目は優れたシステムでも、コスト削減のメリットが出ないことになりかねない」と警鐘を鳴らす。

 さらに牧野CEOは、上記のようなIT投資の判断をした上で、どんなシステムを導入すべきかについても言及した。そこで挙げたポイントは三つ。テクノロジの変化、社会トレンドの変化、法制度の変化への対応だ。「新しいプラットフォームが登場すると、古いシステムを強制的に移行する必要が出てしまうのでは、無駄なコストが発生する。このようなことが起こらないようにするためにも、テクノロジの変化に対応できるシステム選びが重要。また、在宅勤務や2007年問題などの社会トレンドだけでなく、日本版SOX法などの法制度の変化にすぐに対応できる体制も必要だ。多くの企業導入事例やベンダーのサポート体制がカギになる」と、具体的な例を挙げながら三つのポイントを解説した。