カリフォルニア州サンディエゴにある連邦裁判所の判事が3月第4週,米MicrosoftとフランスAlcatel-Lucentのあいだで係争中の特許侵害訴訟において,Microsoftに不利な判決を下した(関連記事:音声圧縮技術を巡る特許侵害訴訟,Microsoftに約15億ドルの支払い命令)。判決に先立ち,陪審は,MicrosoftによるAlcatel-Lucentのデジタル音楽用ファイル形式MP3関連特許2件の侵害と,賠償金15億ドルの支払いを認定していた。Microsoftは,この係争を5件に分けて抗弁してきた。今回Rudi Brewster判事が結論を出した4件は,すべてMicrosoftに不利な内容だった。5件目の判決は,間もなく下される見込みだ。

 Brewster判事は,判決文に「Lucentは,問題の(MP3)特許を単独で保有している」と記した。「Microsoftには,中用権の資格が全くない」(判決文)。Brewster判事は陪審評決を覆せる立場になかったが,いずれかの抗弁でMicrosoft寄りに判断していたら,陪審の決めた賠償金を減額していただろう。

 Microsoftは陪審評決の見直しを求める方針だが,現在のところ5件目の抗弁に対するBrewster判事の判断を待っている。5件目の抗弁は,Alcatel-Lucentの特許について,手続き上の問題があるとした。ただしAlcatel-Lucentの広報担当者は,今回の判決で,最終的な判決が陪審評決に沿った内容になる目星がついたとみる。

 問題のAlcatel-Lucent特許は,Microsoftのライバルである米Appleや米RealNetworksなど,デジタル音楽を手がける多くの企業に様々な影響を及ぼしてきた。Microsoftは「MP3形式はドイツのFraunhofer Institute for Integrated Circuitsも含め,その他多くの企業が共同開発したものであるため,Alcatel-LucentのMP3特許は無効」としている。「Alcatel-LucentはFraunhofer InstituteからMP3をライセンス供与されたに過ぎず,特許の所有権は全く主張できない」(Microsoft)。さらにMicrosoftは,MP3形式のライセンス料1600万ドルをFraunhofer Instituteに支払い済みであることも指摘した。

 別件ではあるが明らかに関連する問題で,Microsoftはコンピュータおよび電話システムの特許を侵害されたとして,2月にAlcatel-Lucentを訴えた。先ごろ米国際貿易委員会(ITC)は,両社に対する取り調べを承諾した。