米Microsoftのセキュリティ・スイート「Windows Live OneCare」は,マルウエアからパソコンを守り,初めて電源を入れたときと同じ状態の維持を保証するのだという。しかし,OneCareの最新版にあったバグが製品の評価に傷を付けた。OneCareが「Outlook」や「Outlook Express」用の一部メール・データ・ファイルを,場合によっては削除することがあったのだ(関連記事:セキュリティ対策ソフト「OneCare」に問題発覚、ウイルス以外のメールも削除 )。苦情が2週間続いた後,Microsoftは3月第2週の週末に大したアナウンスも行わずパッチをリリースし,このバグを修正した。

 Microsoftによると,OneCareは,「Outlook 2002」「同2003」「同2007」と(Windows XP用のバージョンである)「Outlook Express 6.0」のデータ・ファイル内でマルウエア付きメールを見つけたら,そのファイルを誤って隔離するという(ユーザーが削除動作を選んでいた場合は,そのファイルを削除する)。その結果,Outlookはエラーを出し,ユーザーはメールを失ってしまう。興味深いことに当初Microsoftは,この動きが意図したものであり,オンライン・サポート・フォーラムにおいて「この種のファイルを隔離することで『ユーザーのパソコンを保護する』」としていた。イライラしているユーザーがこの見解にどう反応したか想像できるだろう。

 初期設定状態のOneCareは,パソコンのインターネット接続が有効だと,自動的にすべてのパッチをダウンロードしてインストールする。そのため同サービスのユーザーは,大多数が既にアップデートを終えたはずだ。ただし,この2週間にメール削除問題で被害を受けたユーザーにとっては,ほとんど慰めにもならない。被害者の多くは,永久にメールを取り戻せないのだから。

 メール・データ・ファイルを隔離されたユーザーは,OneCareを使うと手作業でメールを復元できる。具体的には,まずメール・アプリケーションを終了してからOneCareの「OneCare 設定を変更」をクリックする。次に「ウイルスとスパイウェア」に移動し,「検疫ファイル」ボタンをクリックする。そしてOutlookのPSTファイルやOutlook ExpressのDBXファイルを選び,「復元」をクリックする。

 Microsoftは2006年に鳴り物入りでWindows Live OneCareを開始し,2007年1月の終わりにWindows Vista版をリリースした。この低価格セキュリティ・スイートの登場は,米Symantecや米McAfeeなどのセキュリティ・ベンダーに自社製品の再考と,より競争力のある製品の発売を促した。ところが,最近のOneCareはトラブル続きで,マルウエア検出/削除能力の比較テスト結果もひどかった(関連記事:最優秀アンチウイルス・ソフトは「AntiVirusKit」,最下位は「Microsoft OneCare」)。バグを修正した最新版をリリースしたものの,OneCareの信頼改善にほとんど役立っていない。Microsoftは先ごろ,「OneCare 2.0」のベータ版を4月に公開すると発表した(関連記事:Microsoft,セキュリティ製品の「OneCare」を早くも「2.0」に)。