東京電機大学で学内システムの構築や運営を担当する橋本明人氏
東京電機大学で学内システムの構築や運営を担当する橋本明人氏
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 3月13日に東京都内で開催された「仮想化フォーラム2007」で,仮想サーバー・ソフト「VMware ESX Server」のユーザーである東京電機大学・総合メディアセンターの橋本明人氏が講演した。

 東京電機大学は2006年に学内システムを更新。その際,三つのキャンパス(東京都神田,埼玉県鳩山,千葉県千葉ニュータウン)に分散していたサーバーを1カ所に集約した。これは500Mビット/秒という高速の広域イーサネットで各キャンパスを接続したことで可能となった。

 東京電機大学は5年ごとにシステムを更新しているが,「次の5年後の更新までに必要とされるサーバーの台数が見積もり困難だった」(橋本氏)。そこで,柔軟なサーバー運営が可能になると考えて仮想化技術を採用した。

 更新後のシステムは物理サーバーが7台,その上で動く仮想マシン(VM)が70個。物理サーバーは当初12台必要だと考えていたが,実際は7台で済んだ。各VMで動くOSはLinux。サーバー・ソフトはApacheやBINDなどのオープンソース・ソフトを活用する。

 旧システムはOSはSolarisだったが,サーバー・ソフトは同じくApacheやBINDなどのオープンソース・ソフト。よって,システムの移行は専用ツールで旧サーバーそのものをVMに変換する手法ではなく,サーバー・ソフトの設定ファイルとコンテンツのコピーだけで実現できた。

 仮想化技術のメリットを一番実感できたのは,システム刷新直後に発生した障害時であるという。これはサーバーが突然停止する障害で,原因はRAIDコントローラの古いファームウエアだった。障害を無くすには,ファームウエアのバージョン・アップが必要だが,そのためにはサーバーを停止しなければならない。しかし,それはサービスに影響を与えるため極力避けたいことだった。

 そこで,活用したのが「VMotion」というVMwareのマイグレーション(サーバー移行)機能である。VMotionを使えば,VMを稼働させたままVMwareが動く他の物理サーバーへ移動させられる。東京電機大学では同機能を使い,VMを一時的に他の物理サーバーへ退避させることで,サービスを止めることなくファームウエアのバージョン・アップを完了させた。

 橋本氏によれば「マイグレーションこそ仮想化技術の一番の利点」だという。