写真1:ノベル Linux担当マネージャーの岡本 剛和氏
写真1:ノベル Linux担当マネージャーの岡本 剛和氏
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写真2:Windowsのデバイス・マネージャで準仮想化ドライバを表示した画面
写真2:Windowsのデバイス・マネージャで準仮想化ドライバを表示した画面
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 ノベル Linux担当マネージャーの岡本 剛和氏(写真1)は3月12日,「仮想化フォーラム2007」で同社の「SUSE Linux Enterprise Server」や同ディストリビューションに搭載する仮想化ソフトウエア「Xen」のロードマップを明らかにした。同社では2007年5月に提供する「SUSE Linux Enterprise Server 10 Service Pack(SP)1」で,Xen上でのWindowsの動作を高速化するドライバを提供する予定だ。

 ノベルが同社のディストリビューションであるSUSE Linux Enterprise ServerにプリインストールしているXen 3.0は,「完全仮想化(full virtualization)」と「準仮想化(para-virtualization」の双方に対応している(Xen 2.0までは準仮想化のみに対応)。完全仮想化ではOSを改変せずに仮想マシン上で動作させられるのに対して,準仮想化では仮想マシンで動作させるためにゲストOSに修正を加える必要がある。ただ準仮想化では,完全仮想化よりもゲストOSの動作が高速になる利点がある。

 米Novellは2006年11月に米Microsoftと技術提携し,Xen上でのWindowsの動作や,Microsoftの仮想化技術(Virtual ServerやWindows Server Virtualization)上でのSUSE Linux Enterprise Serverの動作のサポートなどを進めている。これに関連してノベルは,2007年5月にリリースするSUSE Linux Enterprise Server 10 SP1で,Windows向けの機能を強化する。

 まずSUSE Linux Enterprise Server 10 SP1で,Xen上で動作するOSのサポートがSUSE Linux 10以外に拡大し,Windows Server 2003やWindows XP,Red Hat Enterprise Linuxなどもサポート対象になる。

 またSUSE Linux Enterprise Server 10にプレインストールされる「Xen 3.0.4」には,Windows用の「準仮想化ドライバ(Paravirtual Driver)」を同こんする。準仮想化ドライバは,仮想マシン上のOSにインストールするデバイス・ドライバで,OS標準のドライバを使用するよりもデバイスへのI/Oが高速化されるという。提供する準仮想化ドライバは,ストレージ(ブロック・デバイス)用のドライバと,ネットワーク用のドライバの2種類(写真2)である。

 岡本氏はほかに,SUSE Linux Enterprise Server 10でXenを利用するメリットなどについても説明した。「XenにはCUIのツールしか存在しないが,SUSE Linux Enterprise Server 10にはノベルが開発したXen用のGUIツールが付属する。GUIを使って仮想マシンにメモリーやディスクを割り当てたりできる」(岡本氏)。

 SUSE Linux Enterprise Server 10を使ったXenの導入事例に関しては,住友電気工業(住友電工)のケースが知られている(関連記事:世界初?住友電工が業務システムで仮想マシンXenの実運用を開始,今後は社内標準に,http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060928/249207/)。岡本氏は,「住友電工が仮想化を採用した要因は大きく2つある。1つは,ソフトウエアをより長く使いたかったということ。ハードウエアには寿命があるので5年~7年でリプレイスする必要があるが,ソフトウエアを仮想マシン上で動作させれば,ハードウエアをリプレイスしても,同じソフトウエアを引き続き利用できる。もう1つの要因であるビジネス継続もこれと仕組みは同じで,仮想マシンを使っていれば,システムがサーバーのロケーションに依存しなくなる。もし災害が発生しても,仮想マシン用のディスク・イメージを移転すれば,保守サイトですぐにシステムが利用できる」と説明している。