写真●ガートナージャパンの亦賀忠明氏
写真●ガートナージャパンの亦賀忠明氏
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 「仮想化技術は,単なる流行ではない。新しいITインフラの中核となる技術だ」。ガートナージャパンのITインフラストラクチャ担当バイス・プレジデントである亦賀忠明氏は,3月13日に都内で開催された「仮想化フォーラム2007」でこう主張した。

 亦賀氏は2010年頃には,同社が「テラ・アーキテクチャ」と呼ぶサーバー・インフラが登場すると語る。「米Intelは1つのプロセッサの中に80~100個のコアを集積する方針で,プロセッサの中に現在のサーバーに相当する機能が組み込まれていく。また現在のブレード・サーバーは,集積度がさらに上昇し,プロセッサとメモリーのユニットが『サーバー』の単位になっていくだろう」(亦賀氏)。現在も米Googleのような「ユーザー企業」が,50万台のサーバーを運用しているケースもある。現在よりもはるかに規模の大きいITインフラ「テラ・アーキテクチャ」が登場したときに,その中核になる技術が仮想化であると亦賀氏は主張するのだ。

 また亦賀氏は,別の視点からも仮想化が浸透すると語る。「かつては,コスト削減というと購入するサーバー・ハードウエアやソフトウエアといった製品のコストを下げることだと考えられていた。しかし,実際にシステム投資に占める割合で大きいのは,システム開発とメンテナンスのコストである。そこで最近は,「人間系」つまり,人に関わるコストを,方法論やプロセスの改善で削減しようとしていた。その代表例が,アウトソースやオフショアだ。ところが,人の努力だけでは削減できる努力に限りがある。そこで最近は,テクノロジによってシステム開発とメンテナンスのコストを削減しようという機運が高まっている。それが仮想化や,SOA(Service Oriented Architecture)に代表されるサービス指向の考え方だ」(亦賀氏)という。

 亦賀氏は,仮想化とサービス指向の相性は非常に良いと指摘した上で,「サービス指向で成功している例」を3つ挙げた。1つは「Web 2.0」である。「Web 2.0の本質は,ネットを介して人間がより高度なサービスを求め始めたこと」(亦賀氏)。2つ目は「iPod」。iPodで重要なのは,ハードウエアだけではなく,音楽配信やアプリケーションを含めたサービスであり,「競合ベンダーが失敗しているのは,米Appleに匹敵するサービスを提供できなかったから」(同)。そして3つ目が「米IBMのメインフレーム」なのだという。

 「IBMのメインフレームも,最近はサービス指向という考え方に沿った展開を強めつつある。仮想化機能を搭載し,サーバー統合に向いたIBMのメインフレームが,『サービスを提供するためのプラットフォーム』になっているのだ」(亦賀氏)。「テラ・アーキテクチャ」は,現在のIBMのメインフレームのイメージに近いが,異なるのはオープンなハードウエアによって実現されているという点であり,同じなのは仮想化技術を使ってサービスごとにサーバー・リソースを切り分けて提供できる点である。

 亦賀氏は「仮想化を端的に説明すれば『下位レイヤーの振る舞いを隠蔽する技術』だが,もはやそれだけの存在ではなくなっている。仮想化の新しい定義は『モノゴトを統合するための重要な技術』だ。もちろん,仮想化の導入は目的ではない。企業は,ITインフラが自身の屋台骨になっていることを意識し,ビジネスの成長を実現するために,ITインフラを構築していかなければならない。そのときに,仮想化が重要な手段になっていることを認識していただきたい」とまとめた。