日本IBMの東京基礎研究所は3月12日、視覚障害者がマルチメディア・コンテンツを利用できる新たなWebブラウザを開発した。同研究所によると、既存のコンテンツを変更せずに、画面の読み上げを可能にする技術は世界初だという。

 同研究所アクセシビリティ・リサーチの浅川智恵子 主席研究員は「これまで画面読み上げソフトは、FlashやAjaxなどに対応していないため、視覚障害者はマルチメディア・コンテンツを避けてしまうことが多かった」と指摘する。多くのマルチメディア・コンテンツは、マウスでの操作を前提に作成しているため、操作そのものができない。

 この問題に対して、新しいWebブラウザは、マルチメディア・コンテンツに対して、画面読み上げソフトが認識できるメタ・データを付加する。このメタ・データには、例えば動画の「再生ボタン」や「一時停止ボタン」といった情報が記述されており、その情報に基づいて、音声を読み上げるため、動画を再生できる。

 さらに、これまで画面読み上げ機能の音声と動画から出力される音声とを分けることができず、音声を聞き取ることもできなかった。動画再生ソフト内にあるボリューム・コントロールを操作可能にすることで、この問題も解決する。

 今後、IBMはこのWebブラウザを「なるべく早い段階でオープンソース・ソフトウエアとして公開する予定」(浅川 主席研究員)である。公開する際は、メタ・データを編集できるツールも同時に提供する。

■変更履歴
初出でタイトルに「視聴覚障害者」とありましたが、正しくは「視覚障害者」でした。お詫びして訂正します。 [2007/03/13 11:00]