日立製作所がビジネスパソコンの自社生産をやめ、米ヒューレット・パッカード(HP)からOEM(相手先ブランドによる生産)製品を受ける交渉は、両社がパートナー体制を協議していく中で、昨年7月から始まっていた。

 今回の判断は、「聖域なき事業の再編と見直し」を進めるという日立の方針に沿ったもの。「ビジネス向けパソコンはコモディティ化が進んでおり、メーカーによる差別化を打ち出しにくいと判断した。ビジネス向けPCのシェアは5%程度で、業績も厳しい状況が続いていた」(情報・通信グループ 広報部)。日立のビジネス向けパソコンの出荷台数は、05年度で40万台程度。HPの全世界での出荷台数は米ガートナー調べによると06年通年で3803万台に達する。部品の購買量が少ない日立が、上位メーカーに価格競争力で挑むのは難しかった。

 日立は4月からHPとの協業を開始し、5月以降OEM供給を受ける。日立のビジネスPCの製品シリーズ名は「FLORA」のまま、販売チャネルやサポート体制にも変更はない。ハードディスクを搭載しないシンクライアント製品やブレードPCについても、製品の供給を受ける。また、コンシューマ向けパソコンやIAサーバーについては、自社生産を継続する。「コンシューマ向けパソコンは、地上デジタル放送への対応など情報家電として差別化を図れる」(広報部)と見ている。

 現在、ビジネス向けパソコンの最終組み立ては、同社の豊川工場(愛知県)で行っている。ビジネスパソコンの組み立て生産に携わっていた人員は、同工場のPCサーバーやコンシューマ向け、ATM(現金自動預け払い機)関連部品の生産にシフトすることで、雇用を維持する予定である。