写真1●日本語版サイトが開設された「ワールド・コミュニティー・グリッド」
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写真2●グリッド・コンピューティングに参加するためにインストールするアプリケーション
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 日本IBMは3月9日,グリッド・コンピューティングへの参加を促すWebサイト「ワールド・コミュニティー・グリッド」に日本語のページを開設したと発表した(写真1)。このグリッドは,人類に貢献するプロジェクトに取り組むために構築したコンピューティング環境である。今後は日本からのボランティアの参加を本格的に促進していくとしている。

 グリッド・コンピューティングは,ネットワークでつないだ大量のパソコンによって同時に並行処理するシステムのことで,膨大なシステム資源と時間が必要な演算処理に向いている。同Webサイトから無料の会員登録を行い,専用のアプリケーションをダウンロードして参加する(写真2)。電源が入っていればアプリケーションが動作し,パソコンを使用していない状態のときに自動的にさまざまな演算処理に参加する。

 ワールド・コミュニティー・グリッドが現在支援中のプロジェクトは, 「FightAIDS@Home」(2005年11月21日発足),「ヒトたんぱく質解析 フェーズ2」(2006年6月23日に発足),「がん撲滅支援」(2006年7月20日発足),「ゲノム比較」(2006年11月21日発足),「筋ジストロフィー治療支援」(2006年12月19日発足)の5つ。

 同プロジェクトの第一弾として2004年11月に発足した「ヒトたんぱく質解析」は、2006年7月に終了。有機体やヒトゲノムにあるタンパク質を染色体上に位置づけ、約12万のたんぱく質ドメインの構造を解明。従来の研究機関が持つ計算能力では同じ成果を得るために約100年かかると言われていたところを,ワールド・コミュニティー・グリッドは12カ月で終了できたという。

 現在,ワールド・コミュニティー・グリッドには世界200カ国以上で約26万人のボランティアが参加し,約54万台のパソコンが演算に協力している。約2年間で寄付されたパソコンの稼働時間は,パソコン1台の稼働時間に換算すると7万9000年分,パソコン1万台が約8年間連続して稼働した処理能力に相当する。これまで日本語サイトがなかったこともあり,日本からの参加者数は約6000人,パソコンの台数は約1万台にとどまっていた。