ソフトバンクは3月6日,「不適切な会計処理をしているかのような誤解を与え、市場の信頼を損なった」として,同社に関するアナリストレポートを発行したカリヨン証券東京支店(以下,CLSA)と,同レポートをもとにした記事を掲載したフィナンシャル・タイムズに対して法的措置に入ると発表した。

 ソフトバンクが「不適切」としているのは,CLSAが2007年2月27日に発行したアナリスト・レポートと,そのレポートをもとにフィナンシャル・タイムズが掲載した3月1日付けの記事。同レポートにおいて,CLSAアナリストのKieran Calder氏は,ソフトバンクの会計処理について,次の7つの問題点を指摘した。

「監査法人の変更に伴う財務諸表修正の必要性」
「連結範囲の変更に伴う負債隠し」
「当期純利益とフリーキャッシュフローの巨額差異」
「会計処理の頻繁な変更」
「“Debt”に含まれる項目」
「設備投資額(キャッシュフロー)と資本的支出の巨額差異」
「社長の持株比率の減少とゴールドマン・サックス証券会社の関与の希薄化」

 これらの7つの指摘に対し,ソフトバンクは逐一,「事実は異なる」として反論を行っている。

 例えば,「ソフトバンクの会計監査人が中央青山監査法人から監査法人トーマツへ変更になったことに伴い,決算修正の可能性があるはずだ」というCLSAアナリストの指摘に対し,ソフトバンクは,「中央青山監査法人の業務停止処分に伴い,監査法人トーマツを一時会計監査人として選任,トーマツは2006年9月中間期ソフトバンクの連結及び単体の中間財務諸表に対して無限定有用性意見を付している。過去の財務諸表の修正を要する事項は指摘されておらず,過去の財務諸表修正の事実もない。証券取引等監視委員会による調査は受けていない」と反論する。

 またCLSAアナリストは,連結範囲の変更に伴う負債隠しを指摘する理由として,「ソフトバンクは現在115社の連結子会社,71社の持分法適用関連会社を有しているが64の子会社を連結に含めておらず,また62の子会社と26の関連会社に対し持分法を適用していない。連結範囲に含めない判定基準として,総資産,売上高,純利益,剰余金を挙げているが,負債を入れていない」ことを挙げる。これに対しソフトバンクは,「非連結子会社の第1四半期時点における負債のうち外部借入金は4億円以下であり,当社の連結有利子負債2兆5295億円に占める割合は0.02%以下である。連結子会社としない判定については,中間期において監査法人トーマツが監査している」と反論する。

 ソフトバンクでは,フィナンシャル・タイムズに対して記事が掲載された3月1日に即日抗議を行ったが,訂正記事は掲載されず,記事の訂正と損害賠償を関係当事者に求める法的措置に入ることにした。