ボーランド デベロッパーツールズ事業本部は,同社の開発ツール製品のユーザー向けイベント「第4回デベロッパーキャンプ」を2007年3月6日に開催する予定である。本イベントに合わせ,米CodeGear(米Borland Softwareから2006年11月に分社を発表した開発ツール部門),Vice PresidentのMichael Swindell氏(写真)が来日し,日経ソフトウエアのインタビューに答えた。

──Delphi for PHPで,フリー版を提供する予定はあるか?

 計画していない。CodeGearがフリーの開発環境を提供する目的は,その言語や技術に,新たに取り組むユーザーを支援することだ。PHPのユーザーはすでに何百万人の規模で,これからPHPを学ぼうとする人ための開発ツール,書籍,記事もある。Delphi for PHPの1番のゴールは,PHPをこれから学ぶ人に,その機会を提供することではない。すでにPHPを学んだ人が,今の生産性を改善する機会を提供することである。Delphi for PHPは,ただのテキスト・エディタでアプリケーションを作る開発者に,IDEや,優れたコンポーネントを提供できる。

――PHP以外に注目しているプログラミング言語や開発環境はあるか?

 動的なプログラミング言語では,Rubyに注目している。すでに弊社社長のBen Smithを含む上級役員の間で,CodeGearがRubyによる開発のための製品に取り組むことにコミットしている。ただし,どのような内容の製品になるかは現時点では明らかにできない。現在調査を進めているところだ。2007年中にCodeGearのRuby製品を提供できるものと期待している。

――Rubyの感想を教えてほしい。

 米国ではまだメジャーとはいえないが,ポテンシャルを持っている重要な言語だと感じている。このようなエキサイティングなプログラミング言語が登場するのは興味深い。

――PHPやRubyのほかに注目している言語はあるか?

 動的な言語という意味で,優先順位が高いのはPHPとRubyの二つだ。ほかにはPythonとPerlに注目している。ほかに言語ではないが,技術としてAjaxに注目している。

――米Microsoftや米GoogleはJavaScriptを隠ぺいしてフレームワークを提供する方向のアプローチを見せている。CodeGearはどう考え,どのような製品を提供していくつもりか?

 我々は,JavaScriptやAjaxの開発はデベロッパにとって“とても複雑”だと考えている。一方でWebでリッチなユーザー・インタフェースを使うユーザーは,その快適さを,ユーザー経験(user experience)として持ち始めている。我々は,この差を埋める製品を提供していく。すでにいくつか技術として提供しているものもある。Delphi for PHPが備えるVCL for PHPや,Delphi 2007 for Win32が備えるVCL for Webなどがそうだ。VCLのような透過的に利用できるコンポーネントとして,Ajaxを開発者が簡単に扱えるようにしていく。

――世界中の開発者が,Windowsなど特定のターゲットを持った開発から,Webプログラミングにシフトしている。CodeGearはそのトレンドを追いかけているように見えるが。

 CodeGearは,開発者が望む製品を作るための会社だ。Delphiによる開発のように簡単にWebアプリケーションを作れる環境を開発者が望めば,我々はDelphi for PHPのような製品をリリースする。もちろんWebだけではなく,Delphi,C++,Java,.NETなどのメジャーなプラットフォームについても,製品を発展させ続ける。

――そのメジャーなプラットフォームでは2007年2月にDelphi 2007をリリースした。

 Delphi 2007 for Win32では,Vista対応,Ajaxのサポート,データベース接続などで多くの改良を施した。これらはすべて開発者のためのものだ。

 Delphiのユーザーに聞いてみると,みなお気に入りのDelphiのバージョンがある。ある人はDelphi 6が最高だといい,またある人はDelphi 7が自分の好みだと応える。C++ Bulderについて同じ調査をしてみると,やはり同様にお気に入りのバージョンがあった。そこで我々は,過去のDelphiが好きだったユーザーでも,Delphi 2007をユーザーがお気に入りだと感じてもらえるよう気を配った。

 例えばヘルプ・システムの改良である。普通,IDEを評価するときは,あまり重要な項目としては扱われない。しかし,実際に使うとなると,ヘルプが使いやすいかどうかは,小さいけれども重要だ。このような小さな使い勝手を改善して,ユーザーがDelphi 2007が好きなDelphiといってもらえることを目指した。

――ほかのプロダクトの計画を教えてほしい。

 まず,Delphi 2007 for Win32のフォローアップとして,C++ Builderを改良する。その次は .NETだ。その後にStudio(Borland Developer Studioのこと)として統合していく。このサイクルを加速させて,開発者にとって魅力的なリリースを出荷できるよう努める。

――Win32の将来をどのように見ているか?

 数年前は,なにもかもが .NETに移行するように見えていた。私もそう思っていた。でも実際は違った。誰もが .NETほど高い能力(capability)のものは必要としなかったようだ。米国では,エンタープライズの分野は明確に .NETに移行した。一方で,ISV,科学,政府,テレコム,金融,製造業の分野では,Win32での開発がいまだに強い。アプリケーションがミッション・クリティカルだったり,よいレスポンスを常に求められるなどの理由によるものと思われる。ただし .NETはプラットフォームとしての能力は高い。CodeGearは,Win32と .NETのどちらもサポートしていく。

――ところで趣味は?

 サーフィンだ。CodeGearはカリフォルニアにある(編者注:CodeGearの本社所在地はカリフォルニア州のScotts Valley)。自宅から数分で,サーフィンをするには最高のポイントに行ける。