専用のプレーヤー「typing player」でテキストをテレビ番組として再生
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テレビ番組の基となるテキストデータ
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ブログ感覚でテレビ番組を投稿できる試験サイト
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セガサミーメディアの取締役兼C3研究室室長で工学博士の林正樹氏
セガサミーメディアの取締役兼C3研究室室長で工学博士の林正樹氏
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 毎日のブログやニュースサイトのテキストデータを基に、CG動画のキャラクターが合成音声で記事を読み上げる。これだけなら既に実用化されている技術だが、セガサミーメディアが開発した新技術「typingTV」(タイピングティーヴィー)は、ここからが新しい。実際のニュース番組やテレビ番組で駆使されているカメラワークや、スタジオ風のセットといった多彩な演出を自動的に施してくれる。テキストデータと画像があれば、誰でもテレビ番組が作れるわけだ。

 今回は、typingTVの基となる技術を開発した、元NHK放送技術研究所の研究員であり、現在セガサミーメディアの取締役兼C3研究室室長で工学博士の林正樹氏に、typingTVの中身と今後の展望について尋ねた。

■typingTVでは、どのようにしてテキストをテレビ番組に変換するのか?

林氏:まずは独自に開発したテキストエディターソフト「TV Creator」を使って、音声読み上げしたいテキストに加えて「(おじぎ)」「(カメラ目線)」「(Aにクローズアップ)」といったようにキャラクターの動きやカメラワークをカッコ書きで指示する。あとは、20種類ほど用意した演出のテンプレートから好みの演出を選べば、専用のプレーヤーを通して自動的にテレビ番組に変換する。

■既にCG動画で音声を読み上げるソフトもあるが、typingTVの魅力は?

林氏:実際のテレビ番組で使われるカメラワークなどの演出を盛り込んでいる点だ。これは、私自身も番組を制作していたNHKの、長年にわたる番組制作ノウハウが生かされている。例えば討論番組であれば、カメラワークや人物の視点などは統計的にある程度割り出せる。typingTVでは、さまざまなジャンルのテレビ番組を解析した統計情報から、最適であると思われる演出を実現している。番組制作の素人でも、プロの演出技術を利用できるわけだ。

■typingTVの開発の経緯は?

林氏:もとはNHK放送技術研究所での10年以上の研究を通して開発した、テキストデータをテレビ番組に変換する専用のコンピューター言語「TVML(TV program Making Language)技術が核になっている。パソコン上でTVMLで書かれた台本を入力すると、専用のプレーヤーを通してテレビ番組として再生できる。続いて、言語であるTVMLの活用法として、ワープロ感覚で台本を書くだけでテレビ番組が作成できるツール等の発想を「TV4U」という技術や概念で示した。typingTVは、セガサミーメディアがTVMLとTV4Uを使用して独自に企画、研究している動画生成技術だ。

■typingTVを使って作られたテレビ番組はあるのか?

林氏:NHKの語学番組「英語でしゃべらナイト」内で放送していた30秒枠のコーナーを、TVML技術を使って過去に半年間作成していたことがある。ただ、現在はNHKの番組でTVML技術を使った放送はない。

■今後の展開は?

林氏:現在、ブログをテレビ番組に変換するユーザー投稿型のWebサイトを試験的にオープンしている。まだ限定オープンのため登録数は130人あまりだが、10人ほどの定期投稿者からは1日に1本の投稿がある。将来的には一般的にオープンしたいと考えている。一方で、企業向けには、ニュースサイトの記事をテレビ番組に変換するサービスを代行したり、テレビ番組に溶け込む形での広告提案をしたりしたいと考えている。

■typingTVを通して実現したいものは?

林氏:Web 2.0というか、ユーザーとの双方向性の世界を実現したい。例えば、CGキャラクターや番組の演出は工夫次第でいくらでも増やせる。開発者から提供するだけでなく、ユーザーから新しいキャラクターや演出がどんどん提案されるようになれば最高だ。研究者としては、長年一つの研究を続けていると、どうしても研究成果を世の中に還元したくなる。このような事業はNHKではできないと感じたため、民間に移った。