受信料の支払い義務化を盛り込んだ放送法改正案を総務省が今国会に提出するのかどうかが,微妙な情勢になってきた。総務省としては,NHKに受信料の大幅な引き下げを約束させたうえで,改正案を提出したいと考えている。だがNHKは,受信料を引き下げることを決して約束しようとしない。このため,改正法案の国会提出が不透明になっている。

 NHKは,支払いの義務化により徴収率が高まるのであれば,受信料を引き下げてもよいとの立場だ。しかし,義務化によって徴収率が急に高まる可能性は小さいとNHKは判断している。義務化の効果に疑問がある状況で,引き下げは約束できないという。

 確かに今回の放送法改正案が成立したからといって,NHKによる受信料徴収の強制力が強まるわけではない。なぜなら,改正法案に盛り込まれている「支払いの義務」などの規定は,既にNHKの放送受信規約に盛り込まれているものばかりだからである。
 今回の「受信料の支払い義務化」は,こうした規定を放送受信規約から放送法に移すだけである。NHKは受信料の徴収率が大きく改善する可能性は小さいとみる。

 こうした状況で総務省は,義務化という「アメ」と引き換えに受信料を引き下げを約束するように,NHKに取引を迫っている。しかしNHKの目に義務化は,総務省が考えるほど魅力的なアメに映ってない。このため,取引が不成立となる可能性が出ている。その場合は,改正法案の中から受信料の支払い義務化の項目を削除して提出することになりそうだ。