「EM・ONE」でキーボードを表示させたところ
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「EM・ONE」を横にスライドさせたところ
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横にスライドさせと、裏にデジタルカメラのレンズが現れる
横にスライドさせと、裏にデジタルカメラのレンズが現れる
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大きさはW-ZERO3(右)とほぼ同じ
大きさはW-ZERO3(右)とほぼ同じ
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W-ZERO3(右)のほうが少々厚い
W-ZERO3(右)のほうが少々厚い
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キーボードは打ちやすい
キーボードは打ちやすい
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側面のポインティングデバイスには意見が分かれる
側面のポインティングデバイスには意見が分かれる
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 イー・モバイルが2007年2月19日に発表した「EM・ONE(エムワン)」は、Windows Mobileを搭載したスマートフォン。音声通話機能はないものの、最高3.6MbpsのHSDPA通信機能、ワンセグ放送の視聴機能、デジタルカメラなどを搭載している。読者の中にも興味津々という人は多いはずだ。3月31日発売予定だが、日経パソコンではそれに先駆けて、EM・ONEの最終試作版を入手。その使い勝手などを試してみた。

「W-ZERO3」よりもコンパクト

 まずは、外観からチェックしてみよう。EM・ONEは液晶部分が縦方向、横方向それぞれにスライドするのが特徴。縦方向にスライドさせるとキーボードが、横方向にスライドさせると裏にデジタルカメラのレンズが現れる。側面には、RGBアダプタ端子、miniUSB端子、miniSDメモリーカードスロット、平型のイヤホン端子などが付いている。いずれも使わないときはゴム製のカバーをかぶせておけるので、全体としてはスッキリとした印象だ。ただ、ほとんどの端子のゴムカバーは、ふたを開けたときも本体から外れない設計になっているのに対し、miniUSB端子とACアダプタ端子をふさぐゴムカバーは完全に外れてしまう。使用頻度の高い端子だけに、頻繁に外しているうちにカバーをなくしてしまいそうだ。また、スタイラスが本体左側から抜き出すようになっているのも違和感があった。ユーザーの多くが右利きと考えると、不便に感じる人は多いのではないだろうか。

 次に、大きさをウィルコムの「W-ZERO3」と比較してみた。キーボードを収納した状態でもスライドさせて出した状態でも大きさはあまり変わらないが、厚さはEM・ONEの方が薄い。ただ、スペック上のバッテリー駆動時間はW-ZERO3が5時間なのに対し、EM・ONEは4時間だ。バッテリーを取るか、サイズを取るかで、評価は分かれるだろう。

キーボードはやや堅いが打ちやすい

 この手の端末ではキーボードやポインティングデバイスの操作性がもっとも気になるところだ。EM・ONEのキーボードはキータッチが堅く、本体をしっかり握ってキーを押し込まないといけない。慣れるまでは流れるようにタイピングとはいかないだろう。ただ、このサイズの端末にしては一つ一つのキーが大きいので押しやすく、打ち間違いは少なかった。

 予想以上に使いやすいのが、本体右側面に付いているスクロールホイール。EM・ONEは800×480ドットのワイド画面を採用しているので、横方向はWebサイト全体を表示できる。ただ、縦方向はどうしても表示できる範囲が狭くなってしまう。そんなとき、スクロールホイールを右人差し指でくるくると回せば、画面がするすると上下する。動きがスムーズでポインティングデバイスや十字キーで操作するよりもはるかに楽だ。

 一方で意見が分かれたのが、キーボード右側にあるマウスカーソル移動用のポインティングデバイスだ。キーボードを出した状態でポインティングデバイスを上方向に操作したとき、「指先が画面部分にぶつかって気になる」という意見と「全く気にならない」という意見があった。これはポインティングデバイスを親指の先で押さえて操作するか、指の腹で押さえて操作するかの違いらしい。好みやクセの問題でもあるので、店舗にある実機でぜひ試してみて欲しい。

ソフトは総じてサクサク動く

 Webブラウザーやデジタルカメラ、ワンセグなどのアプリケーションも実際に使ってみた。

 Webブラウザーは「Internet Explorer」と「Opera」の2つが搭載されている。いずれも起動時間が短い。W-ZERO3を愛用する記者によれば、「Operaの起動はW-ZERO3よりもずっと早い」。W-ZERO3、EM・ONEとも、CPUは米マーベルテクノロジーグループ製の「PXA270」。かつて米インテルが開発し、後にマーベルへ売却したPDA向けCPU「XScale」製品群の1つである。ただし、W-ZERO3搭載品の動作周波数は416MHz、EM・ONEは520MHzだ。動作周波数の差が起動時間などに影響しているといえる。

 デジタルカメラは電源が入った状態で上側面のシャッターボタンを長押しするか、スタートメニューの「プログラム」で「カメラ」を選択して起動する。シャッターを切ると、即座に自動で保存される。起動、保存などはキビキビとした動きだ。撮影時は、ディスプレイの右側5分の1が操作画面、左側5分の4が液晶ファインダーになる。撮影後の画像はサムネイルで一覧表示が可能だ。カメラの性能は有効画素数131万画素のCMOSで、一般のデジタルカメラや携帯電話端末と比較すると低いが、ディスプレイが大きいのは利点。

 ワンセグ放送を見る場合も画面の大きさが強みとなる。ワンセグは文字放送と映像を並べて縦または横向きに表示するほか、映像のみの全画面表示もできる。大きな液晶に映像を全画面表示すると、「テレビを見ている」という気持ちになれる。ワンセグ対応の携帯電話の画面で見るときのような窮屈さは少ない。

回線速度は快適、動画も500kbpsなら問題なし

 イー・モバイルのサービスで注目を集めているのが、下り最大3.6MbpsというHSDPAの高速なデータ転送速度と、それを月額定額制で使えるということだ。とはいえ同社は新規参入事業者であり、どの程度通信を快適に使えるかは未知数だ。

 屋外に設置してある同社の基地局は、商用サービスの開始前なので今のところ使用できない。そこで今回は、東京・虎ノ門にあるイー・モバイルの本社を訪ね、社屋内でHSDPAでの通信を試した。

 まずはEM・ONEにプリインストールされているOperaを起動し、PC onlineなど、文字と静止画が主体のWebサイトに接続してみた。画像を100枚以上張り付けてあるようなWebサイトの場合、読み込みが完了するまでに数秒間の待ち時間が生じるものの、全般にほとんど待ち時間無く表示できた。EM・ONEから無線LAN経由でのWebサイト閲覧も試したが、体感速度ではHSDPA接続時も無線LAN接続時も大差なく、快適に使えるという印象であった。

 次に複数の動画配信サイトに接続してみた。Yahoo!動画で映画「ドリームガールズ」の予告編を選び、符号化データ速度500kbpsと1Mbpsの2種類で再生した。いずれの再生時も、動画のダウンロードの遅延により再生が止まるという事態はなく、スムーズに再生できた。ただし1Mbpsでの再生時は、EM・ONEでの映像の復号処理が追いつかず、音声は遅延無く再生されても画面が出てこないという状態になった。EM・ONEは米エヌビディアの携帯機器向けグラフィックスチップ「GoForce 5500」を内蔵しているが、それでも符号化データ速度の高い動画では処理に限界があるようだ。

 ちなみに、YouTubeでも複数の動画を再生しようと試みたが、こちらは映像が1秒間2~3フレームしか表示されず、音声も途切れてほとんど聞き取れず、きちんと視聴できる状態ではなかった。ただし、HSDPA網経由でなく無線LAN経由で再生させたときも同様であること、動画再生時にマウスカーソルの動きがスムーズでなくなることから、この現象はEM・ONEの動画処理性能の問題と推測される。

 イー・モバイルが設置する基地局のカバー範囲は、郊外では半径数km、都心部では数百m程度となる見込みで、すべて当初からHSDPA対応となる。実際のデータ転送速度は商用サービスが始まるまで分からないが、「少なくとも500kbps~1Mbps程度の実効速度を確保することを目標に通信網を整備している。またパソコンからデータ通信カードを接続して通信する場合は、EM・ONEでの接続より高速でのデータ伝送が期待できる」(イー・モバイル広報)としている。