3月1日、中央省庁における情報システムの方針を定める各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議で、システム調達の新たなガイドラインを7月1日から適用することを決定した。新ガイドラインの「情報システムに係る政府調達の基本指針」では、分離調達を実施する。分離調達とは、システム化の範囲を分割し、さらに開発や運用の工程を分離すること。対象となるシステムは、開発費が5億円以上のもので、総務省によれば「年間6000件以上になる」という。

 分離調達の狙いは、1件当たりの規模を小さくすることで、大手ベンダー以外でも調達に参加できるようにすること。これにより、ベンダーの競争を促して、調達コストを下げる。大手企業の独占によってITコストが高止まっている、という批判をかわすものだ。

 そのため、徹底的な分離を実施した。工程分割では、「設計・開発」、「運用」、「保守」を別々に調達する。設計・開発では、システムを「基盤システム」と、そのうえで動作する「個別システム」群に分ける。ハードウエアも別の調達になる。

 ただ、分離調達は開発が失敗するリスクが、一括調達に比べて大きい。昨年12月にガイドラインの案が公表された際、政府内外から「分離調達のリスク」が指摘された。その結果、案を作った総務省は「受注したベンダー間で協議する場を設ける」、「省庁の担当者とベンダーとで役割分担を明記する」といった内容を盛り込んだ。

 すでに社会保険庁では、分離調達を実施し、大手独占を回避するなど、実績がある。ただ、ハードウエアとソフトウエアの分離調達を実施した日本貿易保険では、結果的に稼働開始が約1年遅れるなどのトラブルも発生している。実際に開発が問題なく進むのか、注目されるところだ。