「元ダイエー社長の樋口氏がIT(情報技術)業界に復帰する。“複数の外資系IT企業最大手”が日本法人社長のポストをオファーしており、慎重に選んでいるところだ」。2006年10月、樋口泰行氏がダイエー社長を退任した直後から、こうした情報が流れ出した。

 最大手が複数とはどういうことか。業界関係者の話を総合すると、サーバー最大手、ソフトウエア最大手、業務パッケージ最大手といった各社がこぞって、樋口氏に接触した。最終的に樋口氏が選んだのはマイクロソフト日本法人。いきなり社長には就任せず、まずは3月早々、マイクロソフト日本法人のCOO(最高執行責任者)として着任する。社長就任時期については「年内」のほか、「2008年7月」という情報もある。

 樋口氏がマイクロソフトを選んだのは、アップルや旧コンパックで一般消費者向けのパソコンやIT機器ビジネスを手がけた経緯から、マイクロソフトのビジネスがなじみやすいと考えたからとみられる。マイクロソフトはエンタープライズ市場にも進出しているが、事業の屋台骨はWindowsやOffice製品が支えている。樋口氏は2003年5月から日本ヒューレット・パッカード(HP)の社長を務めたものの、エンタープライズ市場のビジネスを手がけた時期は短い。サーバー最大手や業務パッケージ最大手の日本法人トップとなると、エンタープライズ市場ど真ん中で仕事をすることになる。また、古巣のHPと真っ向から競合するサーバー最大手には行きづらかった。

 一方、マイクロソフトの現社長、ダレン・ヒューストン氏は就任2年目だが、Windows Vistaや2007 Office system、CRMソフトの「Dynamics CRM」など、大型製品の出荷をてがけてきた。この3月、ヒューストン氏は全世界のマイクロソフトを横断する経営戦略策定プロジェクトを推進する役割も担うことになり、日本市場を任せるCOOが必要になったと見られる。

 ヒューストン氏にとって残る懸案は、業務パッケージの「Dynamics AX」を日本市場に投入すること。樋口氏と二人三脚で、VistaとOfficeを拡販し、AXを船出させた後、米国本社でさらにキャリアアップを図る考えだ。