写真1●横田健彦氏(右)と共同開発者の本間宏崇氏(左)
写真1●横田健彦氏(右)と共同開発者の本間宏崇氏(左)
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写真2●いい庭の二宗崇氏
写真2●いい庭の二宗崇氏
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写真3●筑波大学大学院 講師の川島英之氏
写真3●筑波大学大学院 講師の川島英之氏
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写真4●伊尾木将之氏
写真4●伊尾木将之氏
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 情報処理推進機構(IPA)の2006年度上期未踏ソフトウェア創造事業で東京工業大学大学院 情報理工学研究科 助教授の千葉滋プロジェクトマネジャー(PM)が採択したプロジェクトの成果報告会が,2007年2月24日に開催された。プラグインによる拡張が可能なコンテンツ管理システム「Kvasir/Sora」,RubyによるオープンソースのWebコマース・システム「esr-sys」,センサー・データを取り扱うための高速なデータベース管理システム(DBMS)「KRAFT」,Javaの疑似クラス生成ツール「機械猫モッカー」の4プロジェクトである。

 Kvasir/Soraについて発表したのは横田健彦氏(写真1)。同氏は,所属会社の理解を得て,業務時間の半分を未踏の開発に充てることができたという(ただし給料も半分)。発表では,Kvasir/Soraについて説明した後,Webサイトの構築とプラグインの開発についてデモを行った。Kvasir/Soraのプラグインは,「+PLUST」というEclipseプラグインを使って開発する。デモでは,ラジオボタンを使った投票プラグインを開発し,Webサイトに埋め込むまでを実演した。Kvasir/Soraは内部でSeasar2を利用しており,Seasar2のホットデプロイ機能により,プラグインを追加してもTomcatなどのWebコンテナの再起動が不要になっている。

 esr-sysは,広島市で植物によるインテリアの通信販売を行っている株式会社いい庭の二宗崇氏(写真2)が開発した。Rubyで書かれたテンプレート・エンジンのAmritaを利用しており,テンプレートを差し替えることで,ショッピング・サイトの外見をドラスティックに変えられる。特徴は,複数の商品で共通して使う資材(例えば植木鉢)の管理を商品と連動して行える点。将来的には,いい庭のシステムに導入する計画だという。

 筑波大学大学院 システム情報工学研究科 講師の川島英之氏(写真3)は,同氏が開発した二つの高速データベースについて発表した。まず,ディスクへの書き込みを極力減らすことでPostgreSQLのINSERT/UPDATEを高速化した「Sigres」を紹介。PostgreSQLに比べ,INSERTの速度を2倍から最大5倍高速化できたという。もう一つの「KRAFT」は,センサーからリアルタイムで送られてくるデータを解析するための,高速動作に特化したDBMSである。データ挿入の速度は,Sigresの2~3倍だという。

 伊尾木将之氏(写真4)が開発した機械猫モッカーは,JUnitのテストをクラスの仕様とみなして,テストから疑似クラスを生成するツール。伊尾木氏は未踏で,機械猫モッカーに「Beyond the Test」という機能を追加した。テストに書いてある仕様を単純になぞるだけでなく,オブジェクトに期待される挙動をある程度推測する機能である。発表では,じゃんけんやWebアプリケーションの認証のサンプルを使ってBeyond the Testによる疑似クラスの挙動を紹介した。インメモリーで疑似クラスを生成する機能やC#バージョン(Beyond the Testは未実装)も未踏期間中に開発したという。

 なお,この報告会では,国産DIコンテナSeasar2の開発で有名なひがやすを氏が「Flexを使ったSuper Agile Rich Cliant with Seasar2」と題し,FlexとSeasar2によりWebのリッチ・アプリケーションを素早く開発するデモを行った。また,千葉PMは,Javaのバイトコードで今後予定されている拡張について講演した。