基調講演で語る日本コカ・コーラの松鷹恵市副社長広報本部長
基調講演で語る日本コカ・コーラの松鷹恵市副社長広報本部長
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パネラー(左から,本田技研工業の渡辺春樹氏,サントリーの坂井康文氏)
パネラー(左から,本田技研工業の渡辺春樹氏,サントリーの坂井康文氏)
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パネラー(左から,新日本石油の井出敏史氏,日清食品の白澤勉氏,富士通の高橋宏祐氏)
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 「パソコンは全体キャンペーンを補完する“エモーショナル”な用途に,モバイル(携帯電話)は販促用途や囲い込みに利用した」。日本コカ・コーラの松鷹恵市副社長広報本部長は,社団法人日本広告主協会 Web広告研究会が2月23日に開催した,第15回WABフォーラムの基調講演で,自社のプロモーションの例を挙げてこう語った。

 松鷹副社長の基調講演は「多様化時代のクロスメディアコミュニケーション」というテーマでなされたもの。講演の序盤で松鷹氏は「消費者ニーズ」「ブランド・ポートフォリオ」「メディア」の多様化について触れ,消費者とのコミュニケーションのあり方について概観。その後,同社が今年に入って展開しているキャンペーン・コンセプト「Coke Side of Life(Cokeのきいた人生を)」の一環として作成したテレビ・コマーシャル「ハピネスファクトリー」にからめて実施したプロモーションについて説明した。

 プロモーションの“ヤマ”は,普段は30秒ほど放送しているテレビ・コマーシャルを1月29日の1日だけ90秒に延長して流すというもの。その際の効果を最大にするため,Web上で「YAHOO! JAPAN」「mixi」「Infoseek楽天」からの誘引や,コカ・コーラ会員(約200万人)へのメール配信などの施策をした。また,Web上でコマーシャルを視聴してクイズに応募すると,抽選で現金129万円や音楽ギフトカードをプレゼントするキャンペーンを実施した。

 延長して放送した当日は,午後からお客様相談室にコマーシャルに関する多数の問い合わせがあったほか,キャンペーンに2日間で4万4000件の応募があるなどの効果をあげた。松鷹氏は,「パソコンは全体キャンペーンを補完し,コンセプトの理解を促進したり,口コミを創出するのに利用。一方,モバイル(携帯電話)は販促を意識し,行動につなげるきっかけ作りや,若年層向けコンテンツ(ミニゲームや待ち受け画面)でターゲットを囲い込むのに使った」と語った。

 基調講演に続いて,「企業サイトの課題と将来」というテーマでパネル・ディスカッションが行われた。本田技研工業の渡辺春樹氏が司会を務め,パネラーとしてサントリー,新日本石油,日清食品,富士通のWebマスターがそれぞれ参加した。

 新日本石油の井出敏史氏は,企業サイトは「初対面の人に優しく」「リピータには居心地の良い」という“クラスの物知り君的存在”を目指すべきだと語った。さらに,10年後には「動画全盛の波に企業サイトも否応なしに飲み込まれる」として「Webマスターはテレビプロデューサーになっていく必要がある」と指摘した。

 日清食品の白澤勉氏は,企業Webサイトの目的として「消費者との接点となる重要な広告媒体」「ロイヤルカスタマーの醸成と囲い込み」を挙げた。そのうえで,「ロイヤルユーザーをとらえることはできるが,本当に買ってもらえているかどうかを解析できていない」と課題を指摘。意識のロイヤリティを高めるのにはパソコンが有効で,行動のロイヤリティを高めるのにはモバイル(携帯電話)が有効ではないか,との考えを示し,ポイント・システムなどでロイヤル・カスタマーに還元できるように商品からモバイルへの誘導が必要だと語った。

 白澤氏はさらに,「プロモーションとしてWebを使うことの有効性については考えてしまう」と語る一方,「チキンラーメンに入れる卵について“とっとく派”と“混ぜる派”でWeb上で投票したら何十万票も集まった。消費者にリーチするかどうかはコンテンツ次第」との見方を示した。