「ビジネス・インテリジェンス(BI)のユーザーに,今後は“機械”が加わる」。「CIOが挙げた取り組むべきテーマのナンバー1はBIだ」。

 企業の競争激化,RFID(無線ICタグ)などデータを取得する機器の発展,検索技術の劇的な進化を背景に,データを分析する技術・仕組みであるBIに再び注目が集まっている(関連記事)。そうした中,2月20日に開催された「ビジネス・インテリジェンス・サミット」では,最新のBIの動向や導入に当たっての指針について議論が繰り広げられた。ビジネス・インテリジェンス・サミットを主催したのは,ITリサーチ会社であるガートナー ジャパン。

 「世界のCIOにアンケートを採ったところ,投資を重点的に強化するテクノロジ分野は,BIが2年連続トップになった」。ガートナーでBI分野を見るアンドレアス・ビテーラ リサーチ バイス プレジデントはこのように“BIの躍進”を強調する。「企業の競争力を強化するためには,単に従来の業務システムを整備するだけでなく,データを分析し活用する仕組みが必要だ。このような認識が強まっていることを,データがはっきりと裏付けている」(ビテーラ氏)。

 BI導入・活用の成功には,いくつか必須の要素がある。ビテーラ氏が強調したものの一つが,経営戦略や全社のITアーキテクチャの中に位置づけることの重要性だ。「CFO(最高財務責任者)は財務を分析したい。物流管理のマネジャは在庫や物流の現状を分析したい。顧客対応のマネジャは顧客データを分析したい。このようなニーズに応じて,それぞれの部門でBIのツールを導入する,というのが従来よく見られた格好だ。だが,これは全社的に見て最適な形とは言えないし,結果として正確なデータ分析は望めない。全社の戦略システムとしてBIを位置づけ,全社インフラとして構築すべきだ」。

 データはただ取得しても意味がない。データを“情報”に昇華する人間の能力や知恵が必要であることに,異論はないだろう。ガートナーの堀内秀明 BI&インフォメーション・マネジメント リサーチ ディレクターは,それを前提とした上で「いま企業に欠けていることがある」と切り出す。それは「どのタイミングで,どのデータをどう分析すれば,経営上の効果を最大化できるのか」という考え方と,それを具体化する仕組みだという。

 こうした考え方を社内に根付かせ,仕組みを構築するための効果的なアプローチが,BIの効果を最大化するための組織作りである。ガートナーは5年ほど前から,経営陣,IT部門,ユーザー部門の代表で構成する「BICC(ビジネス・インテリジェンス・コンピテンシー・センター)」という組織を提唱している(BICCの解説記事)。「BIの活用には,自社の経営への理解,分析手法への理解,ITへの理解という三つの要素を密接に連携させることが不可欠。だからこそ,BICCのような組織が必要になる」(堀内氏)。日本ではNTTドコモや東レなどがBICCに当たる組織を設立し,BIの効果的な活用に取り組んでいるという。

 BIは近い将来どうなるか。ビテーラ氏は「BIのユーザーは,もはや人間だけではない。すでに“機械”,つまり情報システムがBIを使うようになってきた」という。書類や決裁を業務プロセスに従って回覧するワークフロー・システムにBIを組み込める製品が登場しつつある。BIの分析結果に応じて,システムが書類や決裁のフローを変えるというものだ。「そのうち,ルール・エンジンがBIを使って経営の現況を分析し,人間の代わりに判断を下し,業務システムを自動制御するというテクノロジが普及するだろう」(ビテーラ氏)。