写真 有隣堂の店頭に並んだICタグ内蔵のコミックス
写真 有隣堂の店頭に並んだICタグ内蔵のコミックス
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 出版業界は、今年度で4回目となる経済産業省支援の無線ICタグ実証実験において、ICタグ内蔵のコミックスを初めて一般に発売した。ICタグに格納したISBN番号などにより、カバンに入れている書籍の名前が外から分かるといったプライバシ上の懸念があるなか、ICタグを取り外せない状態で商品を販売することは世界でもまれである。ICタグはコミックスの背表紙の裏に埋め込んでいるので、背表紙部分を破り取るといったことをしないとICタグは取り出せない。

 もっとも今回の実験ではプライバシ上の問題が起こらないように配慮した。店頭にコミックスを並べる前に、すべてのICタグの機能を停止させた(写真)。国際規格Gen 2対応のICタグが持つ「キル」機能を使った。将来、実際にキル機能を使うなら、販売時にPOSレジのリーダーなどで実行することが考えられるが、実験では実施漏れの恐れもあるため、事前にキルしてリーダーに反応しないことを確かめた。

 コミックスにICタグを埋め込む実験は昨年に続き、2回目。前回は背表紙に埋め込んだICタグチップの部分が出っ張り、こすれて汚れたり印刷がかすれるといった課題があったが、今回はICチップ以外の部分を厚くするなどして、出っ張りをなくした。実際に記者が見たところ、どこにチップがあるのか判別できないくらいだった。

 ICタグを店頭で使う実験は有隣堂川崎BE店とジュンク堂書店池袋店で実施している。ICタグリーダーを棚に取り付けたスマートシェルフを使い、店頭で消費者が手に取った回数を書籍ごとに数えて、その数と売り上げの関連を調べるといった実験を行っている。