写真1●修理受け付け時に保証書に貼り付けたICタグを読み取る
写真1●修理受け付け時に保証書に貼り付けたICタグを読み取る
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写真2●ICタグやポイント・カードを読み取ることで、受け付けシステムに情報が自動的に登録される
写真2●ICタグやポイント・カードを読み取ることで、受け付けシステムに情報が自動的に登録される
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 ビックカメラは2月13日、メーカーの製品出荷時から、製品の販売、消費者の手に渡ったあとの修理業務までの一連の業務で、無線ICタグを利用する実証実験の模様を公開した。プラズマディスプレイやDVDレコーダの製品保証書にICタグを貼り付け、記録したデータをサプライチェーンの要所で読み取って、各業務を効率化する。同様の実験を、ヨドバシカメラとエディオンも実施した。

 実験は、大きく二つの観点で実施した。一つは、メーカーが製品を製造、出荷してから、家電量販店の店舗に納品されるまでの物流における、回収対象品の発見作業を効率化することである。まず、実験に参加した日立製作所が製品を出荷する際に、製品保証書にICタグを貼り付ける。ICタグには、製品型番、製造番号、個品ごとに異なるEPCコードを記録しておく。EPCコードはICタグ関連技術標準化団体EPCグローバルが規定したコードである。

 ICタグのデータは、日立の物流センター、ビックカメラの物流センター、店舗において、ハンディ型のリーダーで読み取る。どの製品をどの拠点で入出荷したかは、ICタグのデータを読んだタイミングで、ネットワーク上のデータベースに登録される。

 データベースにはあらかじめ、不具合などで回収の対象となっている製品の製造番号が登録されている。入出荷時に読み取った製品の製造番号が、回収対象のものと合致すれば、入出荷システム上でその製品だけを赤く表示する。これで、不具合のある製品を見落として出荷してしまうことは少なくなる。

 メーカーは回収品を探す場合、商品のこん包をあけて製造番号を確かめる作業に、担当者数人がかりで何時間もの時間を取られていた。「回収対象製品がどこまで流通しているのかを把握することさえ難しく、FAXを使って回収品の製品番号リストを流すこともあった」(日立)。製品の回収は、多い時では月に数回発生することがあるという。

 二つ目の観点は、製品修理業務の効率化である。ビックカメラの店舗で、顧客が持ち込んだ製品の修理を受け付ける際に、保証書に貼ったICタグのデータを読み取る(写真1)。すると、製品の型番や、販売時に記録した販売日などが、修理受け付けシステムに自動的に登録される。ビックカメラのポイント・カードを持っている顧客であれば、それを利用することで、住所や氏名なども自動登録される(写真2)。これまでは紙の伝票で管理していた。

 これらの修理情報も、ネットワーク上のデータベースに登録される。「同じ型番の製品の修理履歴を参考にすれば、修理完了までどのくらいかかるかを、顧客に伝えられる。今は受付担当者の経験を踏まえた推測でしか答えられないのが現状だ」(ビックカメラ)。顧客自身が、Webサイトにアクセスし、自分が修理に出した製品が、まだ家電量販店にあるのか、修理業者が作業中なのかを確認するシステムも構築した。この仕組みには、EPCグローバルが取り決めたデータ共有の仕組み「EPCIS」を利用している。

 実験は、経済産業省が実施している「電子タグを利用した流通・物流の効率化実証実験事業」の一つ。みずほ情報総研が事務局を務め、主立った家電メーカーが加入する家電電子タグコンソーシアムが主導した。システム構築などを手掛けたのは、日立、NTTコムウェア、デンソーウェーブ、東芝テック。1月15日から2月8日まで、ビックカメラの有楽町本館や、日立の配送センターなどで実施した。