NTT武蔵野研究開発センタで開催された「NTT R&Dフォーラム2007」で,2月9日に「ワイヤレスアクセス技術の展望とR&Dの取り組み」と題したワークショップが行われた。NTTアクセスサービスシステム研究所の風間宏志主幹研究員が登壇し,NGN(次世代ネットワーク)や光3000万アクセスが実現する時代におけるワイヤレス技術の適用領域と,システムを開発していくべき方向性を論じた。

 風間研究員は,2010年のワイヤレス技術は「アクセス回線への適用と,他のメディアと協調したり補完することが重要になる」と指摘。「ラストワンホップ」と「モノとの通信(M2M)」をキーワードに挙げた。「FWA(固定無線アクセス)は光アクセスとの協調にあたる。無線LANは通信する端末へのラストワンホップに該当し,(携帯電話などの)モバイルと協調することで,より高度なサービスを展開できる。モノとの通信には“広域ユビキタス”というキーワードが今後浮上してくるだろう」(風間主幹研究員)。NTTとしてはFWAやNWA(公衆無線LANなどのノマディックな無線アクセス),広域ユビキタスを中心に,光ファイバやモバイルといかに協調していくかを考えていきたいとした。

 FWAの今後の展望として風間研究員は,「光アクセスやメタル(電話線)を使うアクセスの補完として,Bフレッツと同等のサービスを提供しなくてはならない」と語る。そうするとひかり電話,映像,インターネットのトリプルプレイを提供する必要がある。さらにNGNに対応したQoS制御やルーラル・エリアへの展開を考えると,「サービスエリアを拡大できる技術を手がけていきたい」(風間研究員)。

 NWAはオフィスや家庭で,イーサネットで高速な通信を体感しているユーザーに対して今までよりも高速化すべきと指摘。100Mビット/秒以上の高速化とセキュリティ確保,無線VoIP端末を外に持ち出しても使えるシステムの開発とそのための品質確保,モバイルと無線LANの補完やコラボレーションを手がけていきたいとコメントした。衛星通信は今後,災害対策や離島地域,高速移動中や海上通信におけるモバイルの補完,センサーネットで集めた情報を集約するといった場面で力を発揮すると展望した。

 広域ユビキタスは「屋外にあるいろんな情報を無線で集めてくること。具体的には半径5kmくらいの無線を持ち,家庭のセキュリティや検針,自動販売機のモニタリング,環境モニターなどの情報を一括で集めてくる。情報は各端末あたり月に数キロバイトから数バイト程度の小さなもの」(風間研究員)。屋外に置けて小型,長寿命の電池を持つ端末や多数の端末を収容できるもの(システム)が必要であり,こうしたシステムや要素技術を開発していきたいという。