総務省は2月9日,2011年以降に停波する地上波アナログ・テレビ放送の周波数の活用を検討する「電波有効利用方策委員会」の第5回会合を開催した。今回は,(1)防災無線やセンサー・ネットワークなどの「自営通信システム」,(2)車車間・路車間通信で自動車の安全を確保する「ITS関連システム」,(3)携帯電話と無線ブロードバンドの「電気通信システム」,(4)MediaFLOに代表される携帯端末向け放送やデジタルラジオなどの「放送システム」の4分類について関係者からのヒアリングを実施し,今後の進め方を検討した。

 地上波アナログ・テレビ放送終了に伴い,VHF帯(90M~108MHzおよび170M~222MHz)の合計70MHz幅が2011年に,UHF帯(710M~770MHz)の60MHz幅が2012年に空き周波数となる。委員会では,この周波数をどのような用途で利用するかを検討して今後の方針を示す。

 これらの周波数は遠くまで届き,屋内浸透性が高いなどの特性を持つ。そのため,携帯電話事業者や放送事業者から自動車メーカー,電機メーカーなど,電波を利用したビジネスを手掛ける企業の多くが割り当てを狙っている。実際,今回の関係者ヒアリングでも,合計130MHz幅の周波数では不足するほど多くの提案が出された。

 例えばVHF帯の170M~222MHzは,自営通信システムの「防災業務用ブロードバンド無線システム」が52MHz幅すべての利用を希望したのに対し,放送システムの「マルチメディア放送」と「デジタルラジオ」も同周波数の52MHz幅すべての利用を主張した。UHF帯も同様の事態になっており,移動通信システムが710M~770MHzの60MHz幅すべての利用を希望したのに対し,ITS関連システムもUHF帯のうち10~20MHz幅の利用を希望した。

 主査の土居範久・中央大学教授は「周波数に限りがある以上,バッサリと切らなくてはいけなくなる」と提案システムの整理・統合や希望する周波数幅の縮小を求めた。また,同様の用途に複数のシステムが提案されている状態について,「この委員会は,限られた電波資源をどのような用途に分配するかのアイデアをもらうことを目的としている。割り当て時に特定のシステムに既得権を与えるものではない」とコメント。システムの違いではなく,用途の違いで提案内容を分類し直すよう要求した。

 今後は,UHF帯とVHF帯を分けて議論する方針を示した。具体的には,UHF帯はITS関連システムと電気通信システムでそれぞれが必要とする周波数幅について検討。VHF帯は,放送システムと自営通信システムで調整する。VHF帯については,放送システムの周波数を30M±5MHz幅で収める方向で検討するよう座長が提案した。