クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤースのレイ・レーン氏
クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤースのレイ・レーン氏
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 かつて米オラクルの社長兼COO(最高執行責任者)を務め,今はシリコンバレーで有名なベンチャー・キャピタル,クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤース(Kleiner Perkins Caufield & Byers)に在籍するレイ・レーン氏。レーン氏は米サンディエゴで2月7日から開催中のイベント「FASTforward'07」で講演し,今後あるべき「パーソナル企業(The “Personal” Enterprise)」と,近年注目が集まっている検索技術の関係について,自身の見解を述べた。

 レーン氏が言うThe “Personal” Enterpriseとは,いわば個々の社員が最大限に能力を発揮し,最終顧客個々人に最大の価値を提供する企業。その特徴の説明には,Web2.0に代表される技術や構成要素がひしめき合う。ユーザー同士がコンテンツを更新し合い質を高めていくユーザー・ジェネレーテッド・コンテンツ(UGC),社内外の有力者のつながりを体現したソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などだ。

 「企業や社会を変革するアイデアは,個人の力,そして個人同士のコラボレーションから生まれている」とレーン氏はPersonalの重要性を強調する。「SNSの隆盛は,企業にとって大きなチャンスだ。重要な人材にどうやってアクセスすべきか,人同士の生きたネットワークの情報がそこに詰まっている」(レーン氏)。

 コンシューマ向けサービスの話題と思われていたWeb2.0。だが最近は「Web2.0の要素を企業システムに取り入れることで,自社サービスの向上や企業変革を図る」という動きが見えつつある。また,消費者向けに開発され磨かれた技術,「コンシューマIT」の企業活用が話題になっている。レーン氏のThe “Personal” Enterpriseも,その流れに沿った企業像と言える。

 The “Personal” Enterpriseの核を握るのが検索技術。ユーザーが入力した知りたいキーワードや質問に応じて,最適な検索結果を返す。検索技術の入り口はシンプルそのものだが,それだけに「本質的にユーザーに顔を向けている」(レーン氏)。「マイクロソフトやオラクル,(独)SAPといった旧来型のソフト会社が提供する製品は,ユーザーの方を向いていただろうか。否だ。ユーザーに顔を向けているのは検索(ソフト)だ」とレーン氏は古巣を批判してまでも,検索技術の有用性を語る。

 特にレーン氏が期待するのは,文脈,つまりユーザーの属性や環境を考慮し,検索結果を動的に変化させる技術。「顧客の趣味趣向や社員の行動履歴に応じて提示する情報を変えるなど,さまざまな応用が期待できる。そしてそれこそが,“Personal”な企業に必須の要素だ」とレーン氏は語る。

 イベントを主催しているファスト サーチ &トランスファ(Fast Search & Transfer,FAST)社は,ノルウェーに本社を置く企業向け検索ソフトの会社。海外企業ではロイターが記事の内容チェックに使用。日本ではリクルートやヨドバシカメラなどが一般ユーザー向けWebサイトの検索エンジンとして採用している。