NTT持ち株会社の橋本信常務
NTT持ち株会社の橋本信常務
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 NET&COM2日目の2月8日,基調講演に登壇したNTT持ち株会社の橋本信常務がNGNトライアルの現況と商用化へのロードマップを説明した。ユーザーにとっての“NGN”は「NTTの独善では完成しない」と説明。会場に詰めかけたITプロフェッショナルに,NTTのNGNを活用したサービスの開発を呼びかけた。

 まず橋本常務は,2006年12月に開始したNGNの実験サービスに言及。「ショールーム見学の予約は3月末まで一杯の状態」と高い注目を集めている現状をアピールした。

 続いてNGNのコンセプトをまとめたイメージ・ビデオを上映した後に,NTTが構築中のNGNの特徴を概説。構成する技術はITU-Tが定める標準仕様と同じとし,世界標準としてのNGN構築の一環である点を強調した。

 NTTのNGNの特徴としては,「品質保証」(QoS),「セキュリティ」,「信頼性」,「オープン」を列挙。QoSは高速道路を例に挙げ,「エッジのノードでユーザーが必要とする帯域を判別し,一般道から高速道路の車線に誘導する」と説明。「現在のところNTTが求める機能を持つ製品は市場に存在しない。開発に時間がかかるため,QoSの商用サービスは段階的なものになる」とした。

「ひかり電話」の障害は繰り返さない

 信頼性を実現する手法を解説する際には,世間を震撼させたNTT東西のIP電話サービス「ひかり電話」の障害を例示。「ひかり電話の障害は,NGNの前段階でのネットワークで起こってしまった。NGNでは『電話は公共性と途絶を許さないサービス』という思いを新たに構築を進めている」と決意を語った。

 オープン性については,「インターネットの自由を奪うのか,という指摘をよく受ける」とNTTのNGNに対する業界に反応に言及。その回答として,「インターネットは“アンチキャリア”の動きから生まれたもの。分散型のネットワークをどう集中制御するかという課題を解決するのがNGNだ。ただ同時に管理性はインターネットの課題でもあり,改善の動きが出ている。お互いがコラボレーションを進めるうちに,役割分担が進むのではないか」とした。

“残り3000万”ユーザーに移行策を用意

 NGNのコンセプトを説明後,NGN商用化に向けたロードマップを提示した。ステップを3段階に分け,第1ステップがNGNトライアル,第2ステップが商用化,第3ステップがNGNへの一本化だ。

 第1ステップのNGNトライアルは,臨場感のある高解像度のテレビ会議,遠隔診断を可能にする高画質の医療支援システムなどが人気と説明。ただ医療支援システムは「技術的には医師の評価に耐える出来だが,市場ニーズと法制度の整備面はまだこれから」と釘を刺し,「改善の動きはあるので,これに賛同する」と周辺環境の整備に力を入れる構えを見せた。

 第2ステップの商用化は,「この1年で中継系のネットワークが完成しつつある。来年度に本格的なサービスを始めたい」とした。

 第3ステップのNGNへの一本化は,「光3000万を掲げているが,残り3000万のユーザーをどうするかが課題。すべてのサービスをNGNに乗せる計画だが,関係各所のコンセンサスを得たうえで移行策を用意する」と慎重な姿勢を示した。

キーワードは「コラボレーション」と「オープン」

 講演の最終段,橋本常務はNTTのNGNがインフラに過ぎず,サービスそのものではない点を改めて強調した。「NTTが何かを支配するというのはあってはならないこと。悪意のあるユーザーを排除する目的の制限はかけるが,NGNはNTTの独善ではできないサービス。オープンとコラボレーションがキーワード」とした。

 また全国的なインフラという性格上,NGNがユニバーサル・サービスの基盤になり得るのかという問題意識を併せて提示。「NGNを都市部だけが享受できて,地方ができないというのは問題。NTTは一企業に過ぎないので,単独では限界がある」と他の通信事業者や国との協力を重視する姿勢をアピール。「国が目指す少子高齢化問題の解消など,国家レベルの取り組みに際してのスターターという位置づけでNGNに着手した。日本,ひいては地球レベルでの貢献ができると期待している」と講演を締めくくった。