写真●「統合的なセキュリティが求められている」と語るThompson氏
写真●「統合的なセキュリティが求められている」と語るThompson氏
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 米Symantecの会長兼CEO(最高経営責任者)であるJohn Thompson氏は開催中の「RSA Conference 2007」で基調講演を行い,企業にとってセキュリティ戦略の重要性が増しており,ベンダーに統合的なセキュリティ・ソリューションが求められいると強調した。ただし「OSベンダーがセキュリティ製品を手がけるのは別だ」と,米Microsoftをけん制した。

 Thompson氏(写真)が率いるSymantecは,2004年にストレージ・ソフトウエア・ベンダーのVERITASを買収した「統合的なセキュリティ・ベンダー(セキュリティ製品以外に様々な製品を手がけるITベンダー)」の1社である。「企業活動や一般の人々の生活が,ますますITやネットワークに依存しようとしている。現在のような『接続された世界』で,企業が信頼を勝ち得るのは,簡単なことではない。企業には,『パソコンをウイルスから保護する』といったエンドポイント(末端)だけの保護ではなく,もっと統合的なセキュリティが求められている」とThompson氏は強調する。

 Thompson氏は,「セキュリティは,ビジネス・プランの中心課題になった。企業のインフラストラクチャでどのように情報がやり取りされているか考慮しないと,セキュリティは確保できなくなった。もはやセキュリティは,情報システムの中で完結できる問題ではなくなった」と語る。セキュリティが企業活動のあらゆる場面に関わるようになったため,Microsoftや米Oracle,米Cisco Systems,米IBMといった主要ベンダーが,自身でセキュリティ事業を手がけ,RSA Conferenceに参加するようになったのだと,Thompson氏は主張する。

 ただしThompson氏は,統合的なセキュリティが求められていると語る一方で,「OSのベンダーが,セキュリティ製品を手がける必要はあるのだろうか」と強調した。

 「Symantecは,米VeriSignや米Yahoo!,米Google,米Intelと提携して,インターネット上でのセキュリティを実現しようとしている。1社だけでセキュリティの全てをやろうとしても,ユーザーはその1社だけを信用するだろうか」とThompson氏は語る。これは,MicrosoftがSymantecの得意とするクライアント向けのウイルス対策ソフトウエアなども手がけ始めたほか,Windows Vistaの64ビット版で,サード・パーティによるカーネル・コードの置き換えなどを禁じる施策を採ったことを意識した発言である。

 Thompson氏は「あらゆる経済活動がインターネット上で行われるようになり,企業は自社のeコマースに参加する顧客も守らなくてはならなくなった。セキュリティを保護するためのポリシーの立案が,企業にとって課題になっている。われわれも,ポリシー立案を補助するようなソリューションの開発に力を入れている」と語り,「接続された世界を守るのは,われわれ全員の責任だ」と聴衆に訴えた。