「最新版のPostgreSQLは16CPUまでスケール(CPU数に比例して性能が向上)する。性能はもはやオープンソース・ミドルウエアの課題ではない」---独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)は2月7日,オープンソース・ソフトウェア・センター(OSSセンター)が実施した「OSS性能・信頼性評価プロジェクト」の結果を公開した。
スケーラビリティ評価は,The Linux Foundation(旧OSDL)が開発したツールDBT-1を利用した。オンライン書店をシミュレーションしたベンチマーク・ツールである。使用したのは,評価時の最新版だったPostgreSQL 8.1にパッチを適用したもの。「現在の最新版である8.2相当」(IPA OSSセンター研究員で日立製作所の鈴木友峰氏)。2005年に8.1を対象に実施した評価では8CPUまでしかスケールしなかったが,今回の評価では16CPUまでスケールすることが確認された。ロック関連のボトルネックが解消されたためだ。
昨年は同時ユーザー数1000程度で性能が頭打ちになっていたが,今回は同時約7200ユーザーまでカバーできた。「2年前,PostgreSQL 7.4ではチューニングしても同時100ユーザー程度までだった」(鈴木氏)と,急速にスケーラビリティが拡大しているとする。
MySQL 5.0に関しては,適切なチューニングを施すことで,100Gバイトの大規模データベースでも利用できるという結果が得られたという。ただしデフォルト設定では実用的な性能は得られず,チューニングが不可欠である。マルチプロセッサ環境では,MySQL 5.0.32では4CPUまでスケールすることを確認したとしている。
またPostgreSQLのクラスタリング・ツールの検証も行った。pgpoolを使用すると,2台で最大約4倍の検索性能が得られた。
Javaアプリケーション・サーバーに関しては,JBoss,Gernominoのクラスタリング機能などの評価を実施した。JBossでは8台構成で性能評価を行い,セッション複製機能(Buddy Repulication)を使った場合でも台数に応じた性能向上が図れることがわかったという。JBossの評価に際しては,ログ解析ツールJBoss Profilerの拡張ツールを開発した。負荷を軽くし,実運用でもログを取得できるようにした。JBoss.orgサイトで公開される予定という。
Geronimo 1.1ではコンテキストレベルの設定では連鎖障害時にセッションが引き継がれないという問題を確認,Geronimoプロジェクトに報告するといったコミュニティへの働きかけを行った。
これらの検証結果から,OSSセンターの鈴木氏は「オープンソース・ミドルウエアの課題はもはや性能ではなくなった」とする。ただし,高負荷,大容量のシステムにおては,ボトルネック解析とチューニングは欠かせないという。
評価結果は,IPA OSSセンターが公開しているオープンソース情報データベース「iPedia」で公開している。
評価プロジェクトは,SRA OSS日本支社,NTTデータ先端技術,住商情報システム,日本ヒューレット・パッカード,野村総合研究所,日立システムアンドサービス,日立製作所,ミラクル・リナックス,ユニアデックスが担当した。