「昔のコンピュータをまとめて保管・展示する博物館を早期に設立し、わが国におけるコンピュータの発展の歴史を学ぶ場を作るべきだ」。国内最大のIT専門学会である情報処理学会は、コンピュータ博物館の設立に向けた政府に対する提言を2月2日付で発表した。

 提言では、「過去の装置は原理が簡単で理解が容易。特に工学系教育においては、専門知識を身に付けるために、過去の機器が果たす役割は大きい」との前提に基づき、「わが国には、国立民族学博物館や東京大学総合研究博物館など、昔のものを収集・展示する国立の歴史系博物館はあるが、コンピュータ分野では、これらの博物館に相当する施設がない」と指摘する。「米国や英国などには、コンピュータの歴史を扱う博物館が複数ある」とも付け加ている。

 「わが国にコンピュータが誕生してから50年。初期の機器の開発に携わった研究者などが高齢に達し職を退くなど関係者が不在になると、かろうじて企業や大学に保管されている機器が散在してしまう恐れがある。時間がたてばたつほど資料集めは困難になり、博物館を作ることは絶望的になる」と訴える。

 「技術の発展過程を知ることによって技術革新の本質を学ぶには、各地に個別に保管されている機器を一堂に集め、体系的に展示すべきだ。国や地方、業界、学会が連携して、公的なコンピュータ博物館を早期に設立することを強く望む」と主張する。