写真●カルチュア・コンビニエンス・クラブの増田宗昭社長
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 CD・DVDレンタル店「TSUTAYA」などを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)の増田宗昭社長は7日午前,東京ビッグサイトで開催中の展示会「NET&COM2007」で「顧客中心主義とCCCのIT戦略」と題する1時間の基調講演を行った(写真)。

 増田社長は,自社のことを「映画や音楽といったソフトを通じてライフスタイルを売る企画会社だ」と語り,これを支援するIT(情報技術)インフラを紹介した。

 具体例としては,地図上で地区ごとの会員・非会員比率が色分けできる「エリアマーケティングシステム」の画面を提示。既存店の浸透度とともに,「会員がいない白紙地帯に十分な人口がいれば,新規出店余地があると分かる」。同システムは,店舗網を約1300店まで拡大する大きな原動力になったという。

 「発注代行システム」も重要なシステムの1つだ。「日本人はソフトの好みが多様。米国に日本の音楽を聞く人は少ないが,日本人は欧米の音楽もよく聞く」。毎月発売される約2000本のCD,約600本の映画という膨大なソフトの目利きは店舗レベルでは難しいため,本部で集中的に発注している。「TSUTAYAなら借りられる」ようにするため,1本ごとの店頭在庫を1時間単位で管理し,「貸し出し中」の状態を最小限にするよう工夫している。

 「Tカード」などTSUTAYAのポイントカードは異業種との連携が進み,2万8000店でポイントがたまるようになっていると説明。例えば,紳士服の青山商事ではTSUTATAとの提携後に,前年比の月次売上高が数ポイント上がっている。TSUTAYA会員約2000万人の送客効果の大きさを見せつけた格好だ。

情報非対称の是正にネットが重要な役割を果たす

 「ウェブ2.0」に関連した話題では,TSUTAYAでは過去3年でテレビCMや新聞折込チラシの広告効果が減少傾向なのに対して,電子メール配信の広告効果が伸びていることを紹介した。

 さらに「情報化社会の本質は『情報の非対称性の是正』だと言われる。ただし,現状はメーカーが消費者よりも圧倒的に多くの情報を持ち,マスメディアによる『是正』も不十分」とした上で,「インターネットがその是正に役立っている」と指摘。就職活動中の学生が,求人情報サイトより「みんなの就職活動日記」のような電子掲示板の情報を信頼している例を挙げた。

 消費者の購買行動も「AIDMA(注意・関心・欲求・記憶・行動)」から「AISAS(注意・関心・検索=Search・行動・共有=Share)」に変わっていると話した。

 この「情報の非対称性の是正」でも,TSUTAYAが持つ圧倒的な数の会員基盤は生きる。インターネットレンタルサービス「TSUTAYA DISCAS」での,借りた映画などへの感想の書き込み数は,人気上位20商品に限っても約5000件ある。これはソフト通販サイトのAmazonの書き込み数と比べても,1000件程度上回っているという。増田社長は,こうした基盤を生かして,ほかの人が薦めた商品をレンタル・購入できるような仕組みをさらに強化していく考えを示した。

 情報の非対称性の解消への取り組みは,TSUTAYA本部と加盟店の間でも起きているという。同社のグループウエア「T-NAVI」には,加盟店から日々の運営アイデアが書き込まれている。例えば,「駐車場に雑草が生えたときに,除草剤を使っていたが,熱湯をかけても効果がありコストが安い」といった書き込みは,他店も参考にしている。「加盟店のほうが現場の情報を多く持っている。古い本部・加盟店の枠組みは捨てなければならない」とも話した。