米AppleのCEO,Steve Jobs氏は米国時間2月6日,DRM(デジタル著作権管理)技術に対する考えを同社Webサイトで明らかにした。Jobs氏は,「オンライン音楽の世界を長期的にみた場合,DRM(デジタル著作権管理)技術で保護しない音楽を自由に販売できるようにするのが理想的」との考えを示した。

 同氏は,Appleが同社の音楽配信サイト「iTunes Store」で販売する楽曲をDRM技術「FairPlay」で保護しているのは,「音楽市場の70%以上を支配する4大レコード会社から楽曲の提供を受けるために必要だった」と説明する。また,FairPlayのセキュリティが侵害された場合,数週間内に問題を解決しなければ,iTunesから音楽カタログを引き上げる取り決めになっているという。

 同氏はデジタル音楽市場の将来を展望した場合,(1)現状のまま,オンライン音楽販売会社は各社独自のDRM技術で保護した音楽を配信する,(2)音楽プレーヤ間の相互運用性を実現するために,Appleが競合他社にFairPlayをライセンス供与する,(3)各社がDRM技術の使用を止め,オープン・フォーマットの音楽を自由に配信する,の3つのシナリオが考えられると説明する。

 各社が独自のDRM技術を使用している現在, 「ユーザーは1社の携帯音楽プレーヤ,あるいは音楽販売サイトしか利用できない」と非難されている。しかし,同氏は「平均的なユーザーのiPodをみた場合,iTunesから購入した音楽は3%未満に過ぎず,それ以外はCDなどから取り込んだ曲。つまり97%はDRM技術で保護されておらず,自由に他のプレーヤで再生できる」と指摘する。

 また,FairPlayをライセンス供与すると,その技術情報が漏れる可能性が高まり,セキュリティ確保がより困難になると説明する。「セキュリティ侵害の被害も広範に及ぶため,短期間で各社が連携して問題を解決するのは難しいだろう」(同氏)

 Jobs氏は,DRM技術を廃止する(3)のシナリオが理想的だと語る。「どの音楽販売サイトで購入した曲も好きなプレーヤで再生できるようになり,消費者にとって最適の選択肢。AppleはすぐにでもDRM技術を廃止する意向がある」(同氏)

 また同氏は,「そもそもレコード会社は,自社が販売する音楽CDにDRM技術を用いていない」と指摘する。「DRM技術で保護していない音楽CDがちまたにあふれている。こうした状況でDRM技術は効果的に機能していない」(同氏)

 AppleはDRM技術の利用をめぐり,欧州で非難を受けている。米メディア(CNET)によると,ノルウェーの規制当局はiTunes Storeで購入した音楽はiPodでしか再生できないという理由で,iTunes Storeの運営を禁止したばかり。Jobs氏はこのような動きについて,「現在のデジタル音楽市場のあり方に不満を感じているのであれば,DRM技術の廃止に同意するよう,大手レコード会社に働きかけるべき」と述べている。

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