総務省は2月2日,「モバイルビジネス研究会」の第2回会合を開催した。この研究会では,販売奨励金やSIMロックの是非,MVNO(仮想移動体通信事業者)の参入促進について議論。メーカーや新規事業者などが活性化するための方策を探る。
第2回会合から4回にわたり,携帯電話事業者や関連企業,団体によるプレゼンテーションと討議を進める。今回は,NTTドコモの伊東則昭・取締役執行役員経営企画部長,ソフトバンクモバイルの五十嵐善夫・常務執行役,MVNO協議会の福田尚久・幹事会議長(日本通信常務取締役CFO)が,現行のビジネスモデルに関する課題などをプレゼンテーションした。
座長の齊藤忠夫・東京大学名誉教授は,販売奨励金,SIMロックといったビジネスモデルの存在が,国内の端末メーカーの国際シェアが低い理由になっていると主張。現行のビジネスモデルは改革すべきとした。
これに対してNTTドコモは,「年間1000万もユーザーが増えるような成長期には販売奨励金やSIMロックが有効だったが,今となっては必ずしも良いモデルではない」(伊東取締役執行役員)と問題意識は見せたものの,SIMロック解除や販売奨励金の廃止による悪影響も大きいとして改革には慎重な姿勢。「SIMロックや販売奨励金をなくすことは考えたいが,いい代案がない」とした。
ソフトバンクモバイルもほぼ同意見で,「現行のビジネスモデルには,メーカー,携帯電話事業者,販売店,ユーザーと多くのステーク・ホルダー(利害関係者)がいる。広範かつ子細に影響を分析すべき」(五十嵐常務執行役)と慎重な議論を求めた。
MVNO促進には販売奨励金の禁止が必要
本研究会では,MVNO(仮想移動体通信事業者)の参入促進策についても議論された。MVNOは,携帯電話・PHS事業者の通信設備を借りて,通信サービスを提供する事業者のこと。MVNO自身は基地局などの設備を持たないため,少ない設備投資で携帯電話事業を始められる。メーカーなどがMVNOになることで,多様なサービスを実現できると期待されている。
会合でプレゼンテーションしたMVNO協議会の福田尚久幹事会議長は,公正な競争環境を作るための策を7項目挙げた。(1)販売奨励金の禁止,(2)端末-網インタフェースを国際標準に完全に準拠させる,(3)相互接続に関して透明性を確保する,(4)携帯電話網をMVNOが借りる際に多大な費用,期間がかからないネットワーク設計にする,(5)接続料金/卸料金を通信にかかわるコストだけで算出する,(6)一部の公衆無線LANを値上げする,(7)携帯電話事業者の認証や課金プラットフォームをMVNOに貸し出すことを義務化する--である。
このうち販売奨励金について福田議長は,「MVNOで参入する新しい事業者は,携帯電話事業者ほどの財務力を持たない。端末の大幅な値下げはできないため,1000円や1万円で携帯を売られると競争にならない」と主張。さらにMVNOが携帯電話網を借りるためのコストについても,「販売奨励金を抜いて通信部分だけの料金で算出すべき」(同)とした。