「最近,IT業界は明らかに『教育回帰』に向かっていると肌で感じる」。IT教育研修サービス大手,富士通ラーニングメディアの岡田恭彦社長はこう語る。同社は1月31日に記者説明会を開催し,IT人材育成の現状について見解を示した。これまでもIT業界では人材育成が重視されてきたが,岡田社長は近年加速している「モノ」から「サービス」へのシフトなどにより,改めて人材育成に注目が集まっていると指摘した。

 その理由の一つとして,岡田社長は「ITSS(ITスキル標準)にさらに定着した感が出てきた」ことを挙げる。「もちろん定義の内容や基準についての不満の声が聞かれるが,自社の人材の能力を確認したいというニーズが増す中,ITSSをツールとして使いたいというITベンダーが増えている」(岡田社長)。ITSSは経済産業省によるIT人材育成モデル。

 続いて,研修事業を統括する羽賀孝夫研修事業部長が,同社顧客の「受講トレンド」を解説した。それによると,ITベンダーで注目を集めているのは,リスクマネジメントやプロジェクトマネジメント関連の講座,あるいはネットワークの基礎を学ぶための講座という。

 こうした傾向を踏まえ,同社は今年,プロジェクトマネジメント関連の研修コースを強化する意向だ。プロジェクトの難易度が高まっていること,現場での余裕がなくなりつつあることなどから,若手プロマネが現場で訓練を受ける機会は減っている。そうした状況を踏まえ,「当社は研修でも十分にスキルを磨ける,実践的なトレーニング・プログラムを用意してきた。今年はこれをさらに改良していく」(羽賀事業部長)。ほかにも,利用部門に向けたIT活用スキルの研修や,新人育成プログラムの強化も検討している。