写真1 口コミ情報を調べられるキオスク端末
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写真2 商品情報の画面
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写真3 キオスク端末に読ませるために商品に取り付けたICタグ
写真3 キオスク端末に読ませるために商品に取り付けたICタグ
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写真4 商品を手に取った回数を調べる陳列棚 商品を穴から取り出すとリーダーがそれを検知する。
写真4 商品を手に取った回数を調べる陳列棚 商品を穴から取り出すとリーダーがそれを検知する。
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写真5 試用品(テスター)に取り付けたICタグ 上のマスカラは、コイン型のICタグを樹脂で挟んで取り付けた。下のクレヨンには直径7.5mmのICタグを埋め込んだ。
写真5 試用品(テスター)に取り付けたICタグ 上のマスカラは、コイン型のICタグを樹脂で挟んで取り付けた。下のクレヨンには直径7.5mmのICタグを埋め込んだ。
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 三越と資生堂、富士通の3社は1月31日、1月26日から2月12日まで三越銀座店と名古屋栄店の2カ所で実施している経済産業省ICタグ実証実験の模様を報道関係者向けに公開した。化粧品を対象にした実験で、(1)化粧品ブランドの選択、(2)そのブランドの商品を顧客が自ら試す、(3)興味のある商品について店員から接客を受けるという三つにフェーズを対象に、ICタグの効果を検証する。

 (1)のブランドの選択では、三越がインターネットの口コミ情報サイト「@cosme」を運営するアイスタイルからコンテンツの提供を受け、店頭で取り扱っているブランドの商品について、利用者の生の声をキオスク端末で調べられるようにした(写真1、2)。評価の良し悪しにかかわらず情報を提供する。「高かったが気に入った」といった生の評価を伝えるほうが、販売促進につながると判断した。三越は実験終了後に今回の端末を実用化する。

 複数のブランドの中から三越が推奨したい商品のサンプルをキオスク端末の近くに置いておく。商品にはICタグを貼り付けてあり、それをリーダーにかざすと、商品の詳細情報や口コミ情報を調べられる(写真3)。キオスク端末では、タッチパネルを使って、顧客が年齢層や肌質を選択してお薦めの商品を選ぶ機能や、三越での販売ランキングなどを調べる機能もあるが、どの画面を操作していても商品をリーダーにかざせば、商品情報画面に遷移するようにした。

 コンテンツは月に1回程度まとめて入手し、店頭で扱うブランドに関する情報を抜き出す。それをDVDディスクにコピーしてキオスク端末にセットする。

細い商品への貼り付けに苦労

 (2)の特定ブランドの商品を顧客が調べるフェーズでは、資生堂の販売ブースにおいて、商品サンプルに付けたICタグをリーダーにかざして商品情報を調べられる端末と、ビデオカメラで撮った顧客の顔をリアルタイムに画面に表示しながら、口紅やアイシャドーを付けた様子を確認できる端末を置いた。さらに、口紅やマスカラのテスター(試しに利用する商品)を陳列する専用棚にもリーダーを取り付け、顧客が何回手に取ったかを調べられるようにした(写真4)。発売前の商品などを陳列しておけば、新色の人気調査などに役立てられるとみている。

 人気調査のための端末では、ICタグの取り付けやリーダーアンテナの設置で工夫した。例えば容器が細長いマスカラには、底の部分に直径15mmと小さいコイン型のICタグを樹脂に挟むような形で取り付けた(写真5)。商品とICタグの間にも樹脂をはさんだ理由は、容器の中に金属成分が入っていたためである。

 こうした51個の全商品を漏れなく高速に読むことも容易ではなかった。顧客が商品を取り出した回数を計測するために、ICタグは約4秒間隔で読む必要があった。

 陳列棚には当初、平面の板状のアンテナを底に取り付ける予定だったが、うまくいかなかった。テスターは商品ごとに長さが違い、陳列棚に空けてある穴の深さも違う。このため陳列棚の底にアンテナを置いても、商品ごとにアンテナとの距離が変わるためである。特にクレヨンに取り付けた直径7.5mmと小さいICタグは最大5~6cmと通信距離が短いためアンテナに近づける必要がある。こうしたICタグを読むため、リーダーアンテナは、商品を挿入する穴を裏側から包み込むような形で、すべての穴の周りをはわしていった。このため全商品を読み取りが可能になった。今回の実験では、ICタグを凸版印刷が取り付け、リーダーとアンテナの開発はセントラルエンジニアリングが開発した。

 最後の(3)の対面販売では、リーダーを取り付けたタブレットPCを設置し、サンプル品に取り付けたICタグを読み取って、商品情報を素早く提示できるようにした。