インフォテリアの子会社である米Infoteriaは2007年1月26日,Webサーバーを運営する人に向けて,Webサーバーの機能に変更を加えることなく,リアルタイムなチャット(会話)機能をWebページに追加するためのAPI「Lingr API」を公開した(関連記事)。特別な道具立てなく,他人がチャットに書いたメッセージをリアルタイムにWebクライアントにプッシュ配信できる。この仕組みを用いることで,社内会議や中古車オークションといった即時性が要求される業務をWebベースで実現できるようになる。

 Lingrとは,同社が運営するWebチャット・サービスである。エンドユーザーは,WebブラウザなどのHTTPクライアントを使ってチャットに参加できる。Lingrが画期的なのは,新規にメッセージが書き込まれたタイミングでWebクライアントに情報をプッシュすることにより,リアルタイムなメッセージの伝達が可能になる点である。余計なトラフィックが発生しないため,ネットワーク処理にかかる負荷も削減できる。

 Lingr APIは,Lingrが提供するチャット機能を,Google Mapsのようにネットワーク経由で利用するためのインタフェースである。識別IDであるAPI Keyを作成/取得して利用する。自社のチャット・ルームをLingr内部に開設し,自社のWebページの一部分にLingrのチャット窓を貼り付けるなどして運用する。Lingr APIのリファレンス情報は,Lingr Developer Wikiで閲覧できる。

 リアルタイムにチャットができる仕組みは,WebクライアントからのHTTP要求に対して,すぐには返答を返さず,メッセージの追加などコンテンツの更新をトリガーに返答するというもの。この方式は俗に“Comet”と呼ばれる。WebサーバーのコンテンツからLingr API経由でLingrのネットワーク・サービスを使うことで,WebサーバーにCometの仕掛けを実装することなく,リアルタイムなチャットが可能になる。

 そもそも,従来のWebサーバーの実装では,HTTP要求に対して,すぐにHTTP返答を送信していた。HTTP要求を受けたタイミングでの最新のコンテンツを転送するのが,HTTPサーバーの役目だったからだ。このため,HTTPベースでチャットを実装する場合,定期的にクライアントがサーバーに要求を出して,追加されたメッセージを得ていた。要求を出す間隔にもよるが,リアルタイムな会話は出来なかった。

 なお,米Infoteriaでは,Lingr APIの公開と同時に,チャット専用のHTTPクライアント・アプリケーション「Lingr Radar」も公開した。Lingr Radarによって,Lingrのチャット機能を使うためにWebブラウザを利用する必要がなくなる。Lingr Radarのメッセージ表示窓はチャット専用のため面積が小さく,業務の邪魔にならない。稼働OSはWindows 2000/XP/VistaまたはMacOS X。