NTTグループは1月26日,東京・大手町のNTTグループのNGN(次世代ネットワーク)トライアル・ショールーム「NOTE」(参考記事)で,地上デジタル放送のIP同時再送信実験を開始した。

 今回の実験は,NTTコミュニケーションズが中心となりNTT持ち株会社や伊藤忠系の電気通信役務利用放送事業者のアイキャストが共同で,NGNトライアルのインフラを利用して実施する。実験では関東広域地区で放送されている地上デジタル放送(合計7チャンネル)をリアルタイムで「H.264」方式で圧縮し,NGNトライアルのネットワークを使ってHD品質のままショールームへ再送信する。なお今回の実験は,総務省が2006年度予算で実施する「地上デジタル放送の公共分野における利活用に関する調査研究」に基づく。

 地上デジタル放送をIPマルチキャスト方式で再送信できるようになったのは,改正著作権法が1月11日に施行されたため。放送を同時再送信する場合に限り,権利処理が大幅に軽減された。これまで地上波放送をIPマルチキャスト方式で再送信するには,番組に関連するすべての実演家(歌手,俳優など)やレコード製作者などから事前許諾を取る必要があり,実現は事実上不可能だった。

 なお実際に役務利用放送事業者などがIP同時再送信をする際には,テレビ局との間に再送信の同意が必要になる。今回の実証実験ではアイキャストがテレビ局からの同意を得た。テレビ局各社が認めた再送信同意は,総務省の実証実験が終了する3月31日までの期間限定という。

 テレビ局各社は今回の実証実験を通して,役務利用放送事業者などから再送信の申請があった場合に,その可否を判断するためのガイドラインを作る。NHKや在京キー局,毎日放送,東海テレビなどが2006年10月に設立した「地上デジタル放送補完再送信審査会」が,実際のガイドライン作りに乗り出す。NTTグループは4月以降,一般ユーザーを含んだ形でNGNトライアルを展開するが,その際にはテレビ局各社に対して新たにIP再送信の同意を申請する形になる。

●日経コミュニケーション編集部より 第4段落の最後の文で,再送信同意の厳密な期限は現在調整中であるため,記事掲載時には「3月31日」としていた記述を「3月末」に変更しました。2007.01.26