写真1 日本OAUGのイベントに顔を揃えたユーザー会の幹部
写真1 日本OAUGのイベントに顔を揃えたユーザー会の幹部
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写真2 ユーザー会の要望に回答する米オラクルのソニー・シン上級副社長
写真2 ユーザー会の要望に回答する米オラクルのソニー・シン上級副社長
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 「日本企業がERPパッケージ(統合業務パッケージ)を利用するのに、カスタマイズやアドオン開発を止めることはあり得ない。カスタマイズしても、バージョンアップを保証してほしいし、少なくともサポート体制を整えてくれるように希望する――」。オラクル製アプリケーションのユーザー会「日本OAUG(Oracle Applications Users Group)」の主催するイベントが1月24日、東京国際フォーラムで開催され、ユーザー会の幹部が、米オラクルに直訴した(写真1)。

 口火を切ったのは、日本OAUGの中でオラクルのERPパッケージ「Oracle E-Business Suite(EBS)」のユーザーが集まるEBS分科会の河崎賢一 分科会代表。「これまでオラクルはEBSの優位性として、カスタマイズの容易さをアピールしていた。確かに米国製のERPパッケージでは、日本の商習慣と違うところが多く、EBSユーザーは半端ではない数のアドオン・プログラムを開発してきた」とEBSユーザーの現状を説明。その上で「現在、米オラクルは、2008年にはERPパッケージの次期版の完成を予定していることもあり、それまでに最新版へのバージョンアップを推奨している。にもかかわらず、バージョンアップに関してサポートをきちんと受けられる安心感がまったくない」と訴えた。

 バージョンアップに対する要望は、旧ピープルソフトや旧JDエドワーズのユーザーからも出た。日本OAUGの中で、旧ピープルソフトのユーザーが集まる「PeopleSoft分科会」の会長を務める山本哲哉氏は、「ただでさえ、現在、稼働しているシステムをそのまま利用するためのバージョンアップに対して、経営陣に理解してもらうことは非常に難しい。カスタマイズやアドオン開発したプログラムがあることで、数千万円から億単位のコストがかかるからだ。日本企業がERPパッケージを利用し続ける以上、カスタマイズやアドオン・プログラムは不可欠。だからこそバージョンアップでは、カスタマイズしたものに対する保証やサポートを低価格で提供してほしい」と話す。

 また、旧JDエドワーズのユーザーを代表して藤井直隆JDE分科会長も、「米オラクルは既存製品をサポートを続けることを表明している以上、現行版へのサポート拡大を望む」。さらに、旧ピープルソフトや旧JDエドワーズのユーザーの中には、バージョンアップだけでなく、元々のオラクルのサポートに対する不満も出た。「オラクルは、買収された企業のユーザーであっても、既存のサポート・レベルを落とすつもりはないと話すが、まったく実感できない。せめて専任の担当者を設置してほしい」(山本PeopleSoft分科会会長)。

 こうした声に対して米オラクル インダストリー・ビジネスユニットのソニー・シン上級副社長(写真2)は、「日本では、ERPパッケージをカスタマイズして利用するユーザーが多いことは理解している。しかし、カスタマイズがERPパッケージを利用したシステム開発や維持コストに影響するのも事実だ。2008年に完成する次期ERPパッケージでは、レポーティングのようにカスタマイズが多く発生している部分を標準機能でカバーできるようにする。また、移行ツールも提供する。新版は新機能だけが搭載されているのではない。バージョンアップによって、カスタマイズしたものを減せるメリットについても理解してほしい」と答えた。

 日本オラクルからも、「既存のユーザーに営業担当者を配置するようにはしているが、アサインが遅れてしまっていたことは申し訳なかった。現在、バージョンアップに伴う移行作業についてのメソドロジーを作成し、そのメソドロジーに基づいたコンサルティング・サービスを提供するように準備している」(藤本寛 執行役員)との考えが示され、イベントは終了した。