NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの携帯電話事業者各社と三菱化学安全科学研究所は2007年1月24日、携帯電話の電磁波が人体に与える影響について調べた細胞実験の報告書を発表した。実験ではヒトとマウスの細胞に対し、規定値の最大10倍の電磁波を一定時間照射し、がん細胞への変異など5項目の影響を調査。その結果として、細胞やその内部の遺伝子に対する悪影響は見つからなかったと結論づけている(発表資料)。

 この細胞実験は、外部の電波を遮断する電波暗室内に、細胞を載せた培養皿49枚に電磁波を照射できる専用の実験装置を用意。この実験装置を使い、総務省の規定する電波防護指針の基準値と、その10倍の電磁波をそれぞれ照射した。

 検体は、ヒトの細胞4種類とマウスの細胞1種類。電磁波を照射する検体と照射しない検体とに分け、(1)細胞の増殖、(2)細胞の損傷(DNA鎖切断)、(3)細胞のがん化、(4)遺伝子の働き、(5)ストレスによるタンパク質の変化と細胞死(アポトーシス)---の5項目について、照射する検体と照射しない検体との細胞・遺伝子の差異を分析した。電磁波の照射時間は5項目それぞれに設定しているが、(3)の細胞のがん化については最大41日間にわたり電磁波を照射した。

 この結果、5項目のいずれについても、電磁波を照射した検体と照射しない検体とで、細胞・遺伝子の働きや変異に有意な違いが見られなかったとしている。

 今回の実験は、NTTドコモなどが三菱化学安全科学研究所に委託する形で2002年11月から実施してきた。弘前大学 医学部 教授の宮越順二氏と北海道大学 工学部 教授の野島俊雄氏が実験結果の検証に携わった。実験結果を含む論文は、米国の生体磁気関連の学会であるBioelectromagnetics Society(BEMS)と同学会誌において発表している1)2)3)4)

■実験結果を含む論文
1) Iyama et al., BEMS 25: 599-606, 2004.
2) Sakuma et al., BEMS 27: 51-57, 2006.
3) Hirose et al., BEMS 27: 494-504, 2006.
4) Hirose et al., BEMS: in press.