写真 過去に閲覧したWebページを一覧表示する検索ソフト「gooメモリ・リトリーバβ」の検索結果画面
写真 過去に閲覧したWebページを一覧表示する検索ソフト「gooメモリ・リトリーバβ」の検索結果画面
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 NTT持ち株会社とNTTレゾナントは1月24日,ユーザーが過去に閲覧したWebページを一覧表示するソフト「gooメモリ・リトリーバβ」の共同実験を始めた。同ソフトは,ユーザーが閲覧したページや操作の履歴をパソコンのハードディスクに記録。検索を実行すると,蓄積したページをサムネイルとして時系列に沿って表示すると同時に,Webブラウザ上で「印刷」や「コピー」などの操作を実行したWebページを「ユーザーが有益と判断した」と見なして強調表示する。

 gooメモリ・リトリーバβは,Webページの閲覧時間,印刷やコピーおよび文字列選択といったユーザー操作の有無を「行動スコア」として数値化。Webブラウザ上でのユーザー操作を重み付けに利用し,行動スコアの上位3ページを赤,次の3ページをオレンジで強調表示する。例えば「携帯電話」「ワンセグ」をキーワードとして入力すると,両キーワードを含むページを時系列に沿って表示。そのページにたどり着いた際のキーワードやマウスで選択したテキストを付記するなど,過去にどういう興味で閲覧したかが分かる仕掛けだ。

 同ソフトはNTTサイバーソリューション研究所が開発。NTTレゾナントのポータルサイト「goo」内の実験サイト「gooラボ」でダウンロード提供する。動作環境はOSがWindows XP SP2,WebブラウザがInternet Explorer 6 SP2以降。Firefoxについては「要望に応じて対応を検討する」(NTTサイバーソリューション研究所メディアコンピューティングプロジェクトの奥雅博プロジェクトリーダー)。蓄積する履歴情報の容量は「1日2時間の利用を6カ月続けた場合で20Gバイト程度と見込んでいる。今後は履歴の削除機能を追加する予定」(同氏)。

 提供期間は2007年6月30日までの約5カ月間。期間中はgooメモリ・リトリーバβの利用時間とバグ情報だけを同ソフトがgooのサーバーに送信。その結果やユーザーからの要望をふまえて,NTTサイバーソリューション研究所がソフトを改善。NTTレゾナントは正式版の提供やgooサイトの新検索サービスにつなげる考えだ。「有償で提供するか,無償で公開するかは検討中」(NTTレゾナントポータル事業本部技術マーケティング部の濱野輝夫部長)という。

“禁じ手”を使いこなし存在感維持へ

 過去に入力したキーワードや検索結果へのクリックの有無など,ユーザーの検索履歴を元に検索結果の表示順などを最適化する手法は「パーソナライズ検索」と呼ばれる。検索サイト側の履歴を収集するパーソナライズ検索サービスは,Googleを始めgooも提供しているが,印刷やコピーといったユーザーのパソコン操作を検索結果を重み付けする指標に使う手法にまで踏み込んだ商用サービスは,プライバシ保護などの観点から存在しない。

 今回のgooメモリ・リトリーバβも,あくまでローカルのパソコンで動作する検索ソフト。Webの閲覧履歴という個人的な情報を収集するため,個人情報を保護できるようにすることで実証実験に踏み切った。ユーザー・アカウントごとにデータベースを分け,蓄積した情報を暗号化。1台のパソコンをアカウントを使い分けて利用している場合でもプライバシを守れる。履歴情報をサーバー側で扱うサービスとしての商用化は「可能性を検討する段階」(NTTレゾナントの濱野部長)と慎重な態度を見せる。

 NTTレゾナントは2003年10月に米グーグルと提携。Googleの検索エンジンをgooで利用中だ。2005年11月にグーグルがユーザーの検索履歴を基に検索結果を表示するベータ版検索サービスの提供を始めるなど,インターネットの検索サイトはパーソナライズ検索が目下の競争の舞台となっている。NTTレゾナントはグーグルや米ヤフーよりも先にユーザーのパソコンだけで収集できる情報の利用をローカル利用限定ながら商用化レベルにまで高めることで,国産検索サイトとしての存在感を維持するための基盤技術とする構えだ。