総務省は1月24日,屋内で携帯電話やPHSの電波が入りづらい状況を解消するため,家庭や店舗などに設置する小電力リピータの技術条件を検討する方針を明らかにした。24日開催の情報通信審議会情報通信技術分科会で報告した。

 小電力リピータとは,携帯電話やPHSの電波が届きにくい場所でも通話可能にする中継装置のこと。同装置を家庭や店舗などに設置することで,電波が入りづらい状況を改善できる。事業者にとっては電波が届きにくい場所を減らせるだけでなく,基地局の設備投資を軽減する効果を期待できるため,小電力リピータのニーズが高まっている。既にソフトバンクモバイルは電波の届きにくいユーザー向けにホーム・アンテナを無償貸与するサービスを展開中だ(関連記事)。

 しかし,現行の制度では中継装置も基地局と同じ扱いになる。他の無線局との干渉を防止するため,設置場所を特定した上で個別に免許を取得しなければならない。中継装置ごとに免許の申請や設置場所の調査,有資格者による設置工事が必要になるため,手間がかかっていた。

 そこで今後は,小電力の中継装置に限り,包括免許または登録局として扱い,個別の免許取得を不要にできないかどうかを検討する。また,他の無線局と干渉しないための技術条件を調査する。具体的には,空中線電力値の制限や,基地局から電波発射を制御する機能の搭載の義務化などである。免許申請の手続きを簡素化することにより,事業者はユーザーの要望に応じて迅速な設置が可能になる。ユーザー自身が中継装置を設置できるようになる可能性もある。

 実は今回の取り組みは,違法な中継装置の設置を防ぐ狙いもある。電波の入りにくい地下の店舗などで免許を申請せず勝手に中継装置を設置し,その装置が発する電波が原因で携帯電話システムが混信する例が報告されている。合法な中継装置を設置しやすくすることで,こうした問題を解消する。

 情報通信技術分科会は,「携帯電話等周波数有効利用方策委員会」の配下に「携帯電話用及びPHS用小電力レピータ」のサブワーキング・グループを設置して調査を開始し,4月にも結論を出す予定。その後,夏ごろをメドに無線設備規則などの関係省令を改正する。