総務省の諮問機関である情報通信審議会の接続委員会は1月23日,第87回会合を開催した。同委員会は2006年11月から,NTT東西地域会社の設備に他の通信事業者が接続する際の条件や手続きの見直しを図っている。これまで4回の議論を重ね,報告書案をまとめた。

 具体的な検討項目は,(1)第一種指定電気通信設備の対象範囲,(2)接続料の算定方法,(3)コロケーション・ルールなど。中でも議論の行方が注目されていたのが,(2)の接続料の算定である。2006年11月に開催した事業者の公開ヒアリングで,ソフトバンクの孫正義社長が光ファイバの貸し出し形態の見直しを強く要望したからだ(関連記事)。

 NTT東西の加入者系光ファイバは現在,「PON」(passive optical network)の仕組みを使い,1本の光ファイバをユーザー宅の最寄りで8本に分岐する「シェアドアクセス方式」が主流となっている。しかし,貸し出し形態が8分岐単位(ただし,NTT西日本は4分岐のメニューも用意する)になるので,他事業者から不満が続出していた。「8分岐をまとめて借りても実際は1分岐しか使わないことが多く,接続料が高く付く」(他事業者)からだ。設備を複数の事業者で共用することにより,1分岐単位の貸し出しを要求していた。

 これを受けて接続委員会で議論した結果,最終的に「少なくとも現時点では,NTT東西に設備の共用化を義務付けるのは適当ではない」と結論付けた。設備を共用した場合,「顧客へのサービス品質などの面で他事業者の影響を受けるリスクがある」,「現状の設備は共用を想定しないので,システムやネットワークの改修にコストがかかる」といった,NTT東西の意見を重視した格好だ。

 ただし,1分岐単位の貸し出しは,NGN(次世代ネットワーク)の接続ルールを検討する際に改めて議論する方針を打ち出した。これから構築するNGNであれば,1分岐単位で貸し出す仕組みをあらかじめ取り入れることで,上記の問題を緩和できる可能性が高いからだ。NGNの接続ルールの検討は,NTTグループの進ちょく状況にもよるが,「できれば4月にも議論を開始したい」(総務省料金サービス課)とする。

 情報通信審議会は26日開催の電気通信事業部会で今回の報告書案の答申を受け,今月中にもパブリック・コメントを募集する予定である。