米Microsoftが一時期,米Appleの「iPod」と連携することを考えていたことが,Microsoftの社内メールから明らかになった。Microsoft社内のメールによると,デジタル音楽事業戦略を「Zuneの製品化ありき」で検討してはいなかったという。Microsoftは,ライバルのAppleと組む道も考えたが,結局Zuneの発売に踏み切ったのだという。これらの検討過程は,アイオワ州デモイン郡の裁判所で係争中のMicrosoftに対する集団代表訴訟で証拠として提出されて判明した。

 MicrosoftがMP3プレーヤの「Zune」と,ZuneブランドのiTunes対抗ソフトウエアをリリースしたのは,同社社内に「当社のハードウエア/ソフトウエア・パートナが,デジタル音楽市場で米Appleの『iTunes Store』と『iPod』に対抗する役目を果たしていない」という不満があったためだ。Microsoftがデジタル・メディア関連のパートナ企業に不満を抱いていることは,かなり以前からよく知られており,2003年に当時Microsoft社長だったJim Allchin氏が出した「sucking on media players」(メディア・プレーヤを味見してみたら)というタイトルのメールで決定的事実となった。Allchin氏は,シンガポールCreative Technologyや米DellのMP3プレーヤの品質に納得していなかったのだ。

 メールのなかでAllchin氏は,あるCreative製MP3プレーヤを「信じられないほどひどい」と評した。「『(Creative Technology傘下である)米Creative Labsの新型プレーヤはApple製品に匹敵する』と聞いたが,とても理解できない。事実と異なる」(Allchin氏)。Microsoft消費者向けメディア技術グループ担当副社長のAmir Majidimehr氏は,Allchin氏のメールに「われわれの悩みを分かってくれましたね」と返信した。

 Majidimehr氏はAllchin氏に対して,「ハードウエア・パートナに報奨金を提供し,MP3プレーヤのデザイン改善に努力するよう促している」と述べた。さらにMicrosoftはその後,デジタル・メディア・プレーヤの共同設計でハードウエア開発メーカーを支援した。例えば韓国iRiverのプレーヤ「Clix」は,Microsoftがその大半を設計し,「Windows Vista」のフォントまで搭載している。そしてMajidimehr氏はAllchin氏に,「当社のこうした努力が効果をあげなければ,『自らハードウエアを作る』しかないかもしれない」と伝えた。

 Allchin氏は,「AppleのCEOであるSteve Jobs氏と,『Windows Media Player(WMP)』互換iPodの開発について話してはどうか」と提案した。iPodの成功でWMPからの「ユーザー離れが加速する」可能性があると,Allchin氏は恐れていた。ご存じの通り,現在MicrosoftはZuneをリリースし,“自らハードウエアを作る道”を歩んでいる。