米フロリダ州オーランドで開催されている「Lotusphere2007」
米フロリダ州オーランドで開催されている「Lotusphere2007」
[画像のクリックで拡大表示]
米IBMのマイケル・ローディン氏
米IBMのマイケル・ローディン氏
[画像のクリックで拡大表示]
Notes/Dominoビジネスは順調に成長しているという
Notes/Dominoビジネスは順調に成長しているという
[画像のクリックで拡大表示]

 米IBMは、企業向けSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)構築支援ソフトなど、ロータス・ブランドで2種類の新製品を今年6月までに出荷する。米フロリダ州オーランドで1月22日(現地時間)から開催されている「Lotusphere2007」の基調講演で初めて明らかにした。

 新製品の一つである企業向けSNS構築支援ソフトが「Lotus Connections」である。この分野に大手ベンダーとして本格参入するのは、IBMが初めて。ブランドが確立しているNotes/Dominoなど既存製品の次期版の発表だけでは、もう物足りなかったのだろうか。Connectionsの投入が発表されると、6000人以上(本誌推定)が詰め寄った会場が大いに沸いた。

 「Lotus Connectionsを使えば、社内外で立ち上がっているブログやコミュニティなどの情報を素早く取り込めるため、業務を効率化できる。さらに有識者からの意見を収集しやすくなるので、業務品質のレベルアップにもつながる」。米IBMでソーシャル・ネットワーキング分野担当バイス・プレジデントのジェフ・シック氏は、こう新製品の導入メリットをアピールする。

 Lotus Connectionsは、既に“稼働実績”がある。というのもConnectionsは、IBMがグローバルで社内向けに展開しているシステムをパッケージ化したものだからだ。現段階では企業向けSNS構築支援ソフトの市場は立ち上がっていない。ただし、IBMの参入で変化が起きることは期待できそうだ。「我々にとってConnectionsは、新たな市場を開拓するための重要な戦略製品だ。ビジネスにとってSNSがどれだけの効果をもたらすのかは、既に活用している我々がよく知っている」。バイス・プレジデントのシック氏は自信を見せる。

 もう一つの新製品は、今年半ばに出荷する「Lotus Quickr」。これは企業内に分散するコンテンツ共有を容易にするためのソフトだ。企業内の複数システムが保持するテキストや画像、音声などのデータを集約する機能を備える。さらにワークフロー制御やプロジェクトマネジメント支援の機能がある。Quickrを導入すれば、「社内プロジェクトや取引先との協同作業などにおける情報共有の煩雑さから担当者を解放できる」(米IBMでLotus製品の開発・サポートを担当するアリスター・レニー バイス・プレジデント)という。

 Quickrが備える個々の機能を見ると、既にNotes/Dominoに実装されているものも多く、目新しさはない。ただしコンテンツ共有を促進するための専用ソフトとしてNotes/Dominoと独立させたことは、ソリューションプロバイダにとって意義があるものとも言えるだろう。社内横断型プロジェクトマネジメントや取引先やパートナー企業との共同研究/製品開発といった用途で、情報共有に苦しむユーザー企業をターゲットに売り込める。

 Lotusphere2007の基調講演では、ロータス事業の中核製品であるおなじみNotes/Dominoの新版「Notes/Domino 8(開発コード名:Hannover)」を今年半ばに英語版を正式出荷することを発表した。日本語版の出荷時期は今年8月と見られる。Notes/Domino 8は既に発表されている通り、現行版のクライアント/サーバー型から、リッチクライアント型にアーキテクチャを変更した製品である。利用者にとって分かりやすい強化ポイントは、誤って送信した電子メールを取り消すことができる機能や、ワンクリックで直近に送信した電子メールやインスタントメッセージなどを一覧表示する機能である。

 「Notes/Dominoの売上高は昨年に比べ、30%増で順調に成長している」。米IBMのロータス・ソフトウエア担当ゼネラル・マネジャーのマイケル・ローディン氏がこう宣言すると、会場から盛大な拍手が鳴った。現行版のNotes/Domino 7が出荷された際には、世界のユーザー企業の30%以上が出荷から15カ月以内にバージョンアップしたとされる。新版がその記録を塗り替えられるかどうか。Notes/Domino 7にも移行していない“慎重”なユーザー企業の多い日本市場では、Notes/Domino 8がどれくらいのスピードで普及するのかが見ものだ。