総務省・総合通信基盤局は1月22日,「モバイルビジネス研究会(第1回)」を開催した。同研究会は国内携帯電話産業のビジネス・モデルを再検討するもの。主に販売奨励金とSIMロックの是非,MVNO(仮想移動体通信事業者)の可能性,国内携帯電話メーカーの国際競争力について議論する(販売奨励金とSIMロックに関してはこちらの記事を参照)。座長は齊藤忠夫・東京大学名誉教授。

 研究会では菅義偉・総務大臣が「販売奨励金,SIMロック,MVNOについて,もう一度基本に立ち返って考える必要があると思い,研究会を立ち上げた」と挨拶。また,「先日,ベトナム,インドネシア,インドへ行ってきたが,まだ携帯電話は第2世代だった。基本に立ち返ってやり直すことで第3世代では(日本の携帯電話メーカーの)海外進出も可能だと考えている」と発言した。

 齊藤座長も「(日本の携帯電話産業は)栄えているとの意見もあるが,私は相当落ち込んでいると思う。端末ベンダーの国際競争力は相当落ちている」とコメント。世界市場ではソニー・エリクソン以外の日本メーカーのシェアが,全社合わせても1割に満たない現状へ危機感を表明した。研究会設立の背景には,現在の「販売奨励金+SIMロック」のビジネス・モデルが,国内携帯電話メーカーの競争力を削いでいるとの認識があるようだ。

 一方,研究会の構成員の一人,合田泰政メリルリンチ日本証券調査部マネージングディレクター・シニアアナリストは「携帯電話に限らず,家電の分野でも国内メーカーの国際競争力は落ちている。競争力低下は電機業界共通の問題点」とコメント。販売奨励金+SIMロックのモデルと,メーカーの競争力低下の間に関連性は低いとの見解を示した。また,合田氏は「販売奨励金とSIMロックにはメリットもあるのでバランスを取った議論が必要だ。NTTドコモやauが築いた垂直統合のモデルが輸出産業になる可能性もある」と主張した。

米国でSIMロック解除は合法

 研究会では第1回目ということもあり,各国の販売奨励金とSIMロックの規制状況などについて説明があった。これによると,フランスやイタリア,デンマークでは携帯電話事業者が端末にSIMロックをかけることに対し,一定の規制をかけている。例えば,デンマークでは端末購入後6カ月を超えてSIMロックを継続することは禁止されている。

 また,米国の動向にも言及があった。米国では携帯電話事業者によるSIMロックが禁止されていない。しかし同時に,SIMロックをユーザーが勝手に解除しても良いと見なされている。米国・議会図書館著作権局は昨年11月,ユーザーによるSIMロック解除は合法とする判断を示した。

 これを受け,齊藤座長は「中国ではSIMロックが勝手に解除された日本の携帯電話が売られている」と発言。日本で1円で購入した携帯電話端末のSIMロックを解除し,中国で数千円で売るといったことが起こっているという。齊藤座長は,SIMロックの解除が合法との見解が世界的に広がり,販売奨励金+SIMロックという日本のビジネス・モデルが破綻する危険性を指摘した。

 研究会は今後,9月中旬まで計8回の開催を予定。意見をまとめ,報告書を作成する。第2回は2月2日の予定。2回目以降はNTTドコモやKDDI,ソフトバンクモバイルなどの事業者をオブザーバーとして招く。