W-OAM typeGのイメージ図。基地局から近い、通信が混み合っていないなど、電波状態が良い場合は64QAMなど高速な変調方式を使う。逆に電波が弱い場合は変調方式をBPSKにして、速度を落とす代わりに途切れるのを防ぐ
W-OAM typeGのイメージ図。基地局から近い、通信が混み合っていないなど、電波状態が良い場合は64QAMなど高速な変調方式を使う。逆に電波が弱い場合は変調方式をBPSKにして、速度を落とす代わりに途切れるのを防ぐ
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濃い青の部分がW-OAM typeGによる拡張部分。将来的にはチャネル数の増加などにより、さらなる高速化も検討するという
濃い青の部分がW-OAM typeGによる拡張部分。将来的にはチャネル数の増加などにより、さらなる高速化も検討するという
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W-OAM typeGの開始当初は最大512kbpsだが、基地局回線のIP網化により最大800kbpsへ
W-OAM typeGの開始当初は最大512kbpsだが、基地局回線のIP網化により最大800kbpsへ
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今春発売の音声端末3機種とデータ通信カード1機種。新たに、音声通話にもW-OAMを適用する
今春発売の音声端末3機種とデータ通信カード1機種。新たに、音声通話にもW-OAMを適用する
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 ウィルコムは2007年1月22日、パケット通信のデータ転送速度を同年春以降順次高速化し、これに対応するパソコン用データ通信カードを発売すると発表した。2006年2月から商用サービスとして提供しているパケット通信高速化技術「W-OAM」を改良したもの。従来のデータ転送速度は最大408kbpsだったが、今回の改良により最大800kbpsへ引き上げられる。パケット通信の料金体系は従来のままで、月額定額制によるデータ通信も可能(発表資料)。

 今回の高速化は、W-OAMの改良版である「W-OAM typeG」により実現した。W-OAM typeGによる高速化は、2段階で進める。第1にPHS端末と基地局とを結ぶパケット通信の高速化、第2に基地局と交換設備を結ぶ回線の高速化である。

 パケット通信の高速化では、変調方式として16QAM(16値QAM)、32QAM、64QAMを追加。さらに変調方式の切り替えを数ミリ秒~数十ミリ秒へ短縮すること、データを送信してから相手の返答を受け取るまでの時間であるRTTを短縮することにより、全体としてのデータ転送速度の改善を図る。従来版W-OAMの場合、4チャネルを使用する「4x」契約では最大204kbps、8チャネル使用の「PRO」契約では最大408kbpsだった。W-OAM typeGの導入により、2007年春に4x契約で最大256kbps、PRO契約で最大512kbpsに引き上げる。

 基地局回線の高速化については、同社は従来使用していたISDN回線から、光ファイバーを用いたIP網に切り替える工事を順次進めている。この回線切り替えが完了した所では、4x契約で最大400kbps、PRO契約で最大800kbps程度まで高速化できる見通し。

 W-OAM typeGの対応端末として、ネットインデックス製のPCカード型データ通信端末「AX530IN」を2007年春に発売する予定だ。

音声通話にもW-OAM適用、電波が弱くても途切れにくく

 今回の発表に合わせて、同社はPHSの音声端末3製品を発表した。京セラ製の「WX320K」、日本無線製の「WX220J」「WX321J」である(発表資料)。

 3製品とも、4xのパケット通信と従来版のW-OAMに対応しており、データ転送速度は最大204kbps。製品内蔵のブラウザーによるWebサイト閲覧のほか、USB端子にパソコンを接続しデータ通信することも可能。また新たに、回線交換方式による音声通話にもW-OAMを適用。電波の弱い場所で通話する場合に変調方式をBPSKに切り替えることで、通話を途切れにくくした。

 なお、製品発表の記者会見においてウィルコム 代表取締役社長の喜多川政樹氏は、「今回の製品は単打だが、ホームランや三塁打も視野には入っている」と発言。2005年末から2006年にかけて注目を集めたスマートフォン「W-ZERO3」「W-ZERO3[es]」に続く、注目を集める新製品の発売を計画していることを示唆した。

※注 W-OAM方式について
 従来のW-OAMは、データ通信の遅い順にBPSK(2相PSK)、QPSK(4相PSK)、8PSK(8相PSK)という3種類の変調方式を使い分ける。PHS端末と基地局との間で通信する際、電波状態が良い場合は変調方式を8PSKに切り替えて通信を高速化する。逆に電波状態が悪い場合はBPSKに切り替え、通信を途切れにくくする。この3種類の変調方式を、通信中に数百ミリ秒単位で動的に切り替えることで、データ通信を高速化した。