ITエンジニアを派遣する事業者が急増している。東京労働局によれば、情報サービス業としての労働者派遣サービスを認めた事業所数が、2006年度は都内だけで1000を超える見込みという。これは、「初めてのこと」(需給調整事業大二課の新田徹則 副主任需給調整指導官)だ。また、この数は、同局が昨年度に許可した事業所数全体の半分にあたる。

 2007年1月現在、東京都内の労働者派遣事業所数は約1万3000(本誌推計)。そのうち2000は、昨年4月から今年1月までに許可された事業所である。東京労働局は業種別の許可件数を公表していないが、情報サービス業の許可件数が年間1000件を超えるのは今年度が初めてであることは認める。その多くは、人材派遣サービスを本業としていないITベンダーやシステム子会社だ。

 情報サービス業の労働者派遣申請が増えているのは、労働局による偽装請負や違法派遣への指導が厳しくなっているため。昨年10月と11月に東京労働局など関東1都6県の労働局が「請負・派遣適正化キャンペーン」を実施したところ、抜き打ち調査を実施した約6割(386件)で偽装請負・違法派遣の実態があった。詳細な結果は5月末に公表されるが、「情報サービスにかかわる指導件数は、製造業に次いで2番目に多かった」(新田指導官)。

 例えば、成果物に対して対価を支払う請負契約を結んでいるにもかかわらず、発注企業の担当者がITベンダーやシステム子会社のエンジニアに対して直接、開発・運用の指示を出していた場合、偽装請負・違法派遣と見なされる。この問題を是正するには、請負契約を派遣契約に変える必要があるが、そのためにはITベンダーやシステム子会社が労働者派遣事業の許可を受けていなければならない。

 東京労働局が情報サービス業240社に対して実施したアンケート調査では、32.9%が「現在行っている請負が適正ではない」、21.6%が「適正かどうか分からない」と回答した。新田指導官は「昨年は製造業への指導を強化したが、今後は情報サービス業への啓発活動や指導を強化しなければならない」と、IT業界に対して警鐘を鳴らす。

【1月12日訂正】労働者派遣事業所数に「本誌推計」を追記しました。当初、「摘発」としていた部分を「指導」に変えました。5月末に予定している正式報告の内容は未定なため、「業種別件数など」を削除しました。以上、お詫びして訂正します。本文は修正済みです。