NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの携帯電話事業者3社は2007年1月10日、110番、118番、119番への緊急通報時に端末の現在地を通知する「緊急通報位置通知」システムを2007年4月1日に運用開始すると正式発表した(発表資料)。

 同システムは「日本版e911」と呼ばれているもので、緊急通報時にGPSまたは基地局により現在地を測位し、自動的に警察、海上保安本部、消防へ通知する仕組み。外出先などからの緊急通報で、通報者が現在地を口頭で明確に伝えられないような状況でも、通知された位置情報を基に各機関の指令台で現在地を確認できる。2006年1月に改正公布された総務省令(事業用電気通信設備規則)により対応が義務づけられ、各社が準備を進めていた(関連記事)。

 今回の発表に併せ、海上保安本部が11管区のすべてで2007年4月の運用開始当初から日本版e911に対応することが明らかになった。警察はこれまでの方針通り、2007年4月の運用開始当初は全国52地域の通信指令室のうち、北海道・網走支庁、東京、神奈川、愛知、大阪、奈良の6指令台で位置情報の受信を可能にする。2008年4月には、全国の通信指令室の半数で日本版e911に対応する予定。

 一方、消防は今のところ調整中。119番通報を受信する指令台は、各市町村が運用している例が大半。全国の通信指令室の総数は1000を超え、個々の指令台の規模は警察や海上保安本部より小さい。全国各地の消防で日本版e911の受信設備を整えるには予算などの問題もあるため、対応を完了するまでには数年かかることが見込まれる。

GPS情報の通知機能、3事業者の15機種が対応

 総務省令では、2007年4月以降に発売される第3世代携帯電話(3G)端末を対象に、原則として全機種でGPSにより位置情報の通知を可能にするよう求めている。ただし実際には、低価格機など一部製品において、GPSを搭載しない機種も残る見込み。この場合は代替として、1カ所または複数の基地局から端末のある方角と距離を測り現在地を算出する(セルベース測位方式、複数基地局測位方式)。測定誤差はGPSによる測位の場合より大きくなり、数百m~10kmとなる。

 NTTドコモの端末では、「FOMA 903i」6機種でGPSによる位置情報の測位・送信が可能。これ以外の3G端末では、基地局測位による位置情報を通知する。第2世代端末の「ムーバ」は対応しない。

 KDDIは、2007年1月下旬に発売する「ジュニアケータイ A5525SA」「Sweets cute」「A5523T」の3機種でGPS測位に対応する。これ以外の第3世代端末全機種と、「cdmaOne」のブランドで提供していた2.5世代端末の全機種で、基地局測位方式による位置情報の通知を可能にする。「ツーカー」ブランドの第2世代端末は対応しない。

 ソフトバンクモバイルは、「810T」「811T」「904T」「910T」「904SH」の各機種と、2007年2月下旬に発売予定の「コドモバイル 812T」の合計6機種でGPS測位による位置情報通知に、それ以外の第3世代端末全機種で基地局測位方式に、それぞれ対応する。第2世代端末は非対応となる。

 PHS事業者のウィルコムは、「PHSは今のところ日本版e911の対象外であり、緊急通報時の位置情報通知には対応していない。ただし、今後そのような話があれば当然対応していく」(広報宣伝部)としている。