ITIL(ITインフラストラクチャ・ライブラリ)の国際的な認定資格「ITILファウンデーション」や「ITILマネージャ」の教育や資格試験の先行きが不透明な状況が続いている。これまでオランダのエクシン・インターナショナル、英BCS-ISEBの2社が資格試験やトレーニングの認定を提供してきたが、ITILを開発した英国商務局(OGC)は2007年1月からITILブランドの管理や資格認定試験、教育機関の認定などを民間の英APMグループに委託しており、既存の資格とは別の教育、認定スキームが登場する可能性がある。

 これまでITILの資格認定のスキームは、英OGC、英ITSMFインターナショナル、エクシン・インターナショナル、BCS-ISEBが参加するICMB(ITIL認定マネジメントボード)が開発、管理しきた。そして実際の認定試験や教育機関へのトレーニングの認定は、エクシンとBCS-ISEBの2社が提供している。2社は今後の委託先であるAPMグループと、引き続き資格試験やトレーニング認定を提供する契約を結ぶことを数カ月にわたって協議してきた。だが現時点では契約に至っていないという。今後APMグループが独自に認定スキームを用意すれば、エクシンとISEBが提供するITILファンデーションやITILマネージャなどの認定試験はOGCのお墨付きにならない場合もありそうだ。

 エクシンとISEBの2社は、昨年12月に提携を発表、今後もITサービスマネジメント関連のトレーニングの認定や試験を共同で開発・提供していくことを表明した。新バージョンのITILバージョン3については、欧米では2007年春、日本語版は2007年夏以降に認定試験の提供を始める見込み。エクシン・ジャパンの中川悦子日本支社長は「APMグループとの協議にはまだ結論が出ていないが、既存の顧客のためにも今までの認定資格と一貫性のある教育・認定スキームを提供していくという当社の方針は明確にしておきたい」と話す。APMグループと契約しない場合は二つの教育、認定が競争することになるが、「既に新バージョンの準備も進めており、品質的にもアドバンテージがある」(中川支社長)。

 日本にはAPMグループの拠点がなく、今後OGCお墨付きの認定資格がどのような形で提供されるのかの情報はほとんど手に入らない状況。ITILの認定トレーニングコースを提供するある教育事業者の担当者は「APMグループの教育や資格が明確になった時点で対応を検討する。当面は既存の教育コースを提供する」と言う。ITIL関連の教育や認定資格取得を検討する企業の担当者は、先行きに注目しておく必要があるだろう。