NPO(特定非営利活動法人)である内部統制評価機構(ICAO)は2007年4月に、非上場の中小企業を対象に内部統制の整備状況の認定制度を開始する。内部統制の有効性を診断する独自の評価基準を策定し、それに沿って整備状況を判断。優良な企業に対して認定マークを付与する。

 ICAOの高梨智弘専務理事は、「中小企業は法的に整備が義務付けられていないこともあって、内部統制になじみのない場合が多い。だが、新会社法や金融商品取引法の成立などをきっかけに、企業規模を問わず、内部統制の重要性が叫ばれるようになった。認定制度により、中小企業にも内部統制を普及させたい」と意気込みを語る。ICAOは、公認会計士などが中心となり06年11月に設立された。NPO「共済会審査機構」が名称を変更したものだ。

 ICAOが今回の認定制度で利用するのは、評価基準の「簡易版」。(1)顧客や社会との良好な関係維持、(2)経営資源の確保・維持、(3)経営者、経営幹部、管理者および社員各個人の能力向上と、組織能力向上を目指す学習の仕組み、(4)経営管理の実践と改善、(5)知の経営の実現、の5章から成り、それぞれ10個の質問を用意している。

 認定を受けたい企業は、これらの評価項目に沿って回答し、ICAOに認定された内部統制評価者にレビューを受ける。レビューの結果、内部統制の整備状況が優良と判断されると、ICAOがその企業に対して認定マークを付与する。

 評価基準について高梨専務理事は、「COSOをベースに中小企業の経営者でも分かりやすい表現に書き換えたもの」と説明する。COSOは内部統制のフレームワーク(評価基準の体系)だ。米SOX法(2002年サーベインズ・オクスリー法)に対応する企業などでも利用されており、内部統制を整備する上で事実上の標準となっている。

 COSOは、内部統制を整備する目的として「業務の有効性と効率性」、「財務報告の信頼性」、「関連法規の順守」の三つを挙げている。ICAOの評価基準は、この中で「中小企業にとってもっとも重要な、業務の有効性と効率性を追求している」(高梨専務理事)。これに対し、上場企業に内部統制の整備を求める日本版SOX法は、財務報告の信頼性を目的としている。目的が違うため、「認定を受けたからといって、これだけで日本版SOX法に対応できるわけではない点に注意してほしい」(高梨専務理事)。

 ICAOは評価基準として、簡易版のほかに「通常版」と「詳細版」を用意している。認定マークを設けるのは、簡易版だけの予定だ。「通常版は、簡易版で認定マークをうけた企業が、より高度な内部統制を整備したい企業向け。詳細版は、大企業と同等の内部統制を整備したい企業向け」(高梨専務理事)という位置づけである。

 今後、ICAOは、「評価者の育成に力を入れていく」(影井宏司事務局長)という。評価者として、ITコーディネータや公認会計士、税理士、中小企業診断士などを中心に育成していくほか、「認定を受けたい企業の社員などを教育する仕組みも作る」(同)予定だ。

 認定の取得にかかる費用は、「100万円以下に抑える予定」(高梨専務理事)。ICAOは、評価基準の簡易版を説明した文書を2000円で配布するほか、内部統制の整備に関する相談を1回5万円で受け付ける。認定された評価者から、内部統制の整備状況のレビューを受ける場合は1回につき10万円かかる。レビューでは、認定のほかに改善ポイントのアドバイスなどを提示する。