写真 日本アバイアの橋村信輝コミュニケーション・システムズ・ディビジョン リージョナルプロダクトマネージャ
写真 日本アバイアの橋村信輝コミュニケーション・システムズ・ディビジョン リージョナルプロダクトマネージャ
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 日本アバイアは来年3月までに,同社のIP-PBXおよびSIPサーバーに,ノキア製のスマートフォン「Nokia E61」を組み合わせたモバイル・セントレックスの提供に乗り出す。コミュニケーション・システムズ・ディビジョンの橋村信輝リージョナルプロダクトマネージャに新ソリューションの概要を聞いた。(聞き手は山崎 洋一=日経コミュニケーション

――提供をはじめるモバイル・セントレックスの概要は。

 ソフトフォン「one-X Mobile Edition 4.1」(one-X 4.1)を,来年3月までに日本で発売する予定だ。今年9月に出荷を始めたIP-PBXシステム「Communication Manager 3.1.2」,SIPサーバー「SIP Enablement Services」と組み合わせて使える。このソフトフォンを無線LANと第三世代携帯電話(3G)に対応するデュアル端末「Nokia E61」に搭載することで,社内ではIP電話,社外では3G携帯電話として使うモバイル・セントレックスを構築できる。

 one-X Mobile Editionの現行バージョン(3.x)は,3Gの回線を使いCommunication Managerを呼び出す方式で,携帯電話と内線網と連携させている。専用番号をCommunication Managerに設定しておき,この番号に携帯電話のone-Xから電話をかけトーン信号を送り,通話を転送したり電話会議を始めたりできる。つまり現時点ではVoIP(voice over IP)を使っていない。

 これに対してone-X 4.1では現行の仕組みに加え,無線LAN環境ではSIPによるIP電話クライアントとしても使える。これは,E61が標準搭載するSIPクライアント機能を利用して実現している。IP電話の場合は,PBXにSIP URI(SIPの通信リソースを表す識別子)の拡張コマンドとして転送や電話会議開催のコマンドを送る。無線LANと3Gを使い分けできるように,「無線LANのみ使える」「無線LANを3Gに優先させる」「3Gを無線LANに優先させる」「3Gのみ使える」の4種類のモードを設定可能だ。

――製品のほかにシステム構築を手がけるインテグレータも必要だ。

 このソリューションに関して,伊藤忠テクノソリューションズやネクストコム,都築電気をはじめとするインテグレータと打ち合わせを進めている。むやみにパートナを広げ収拾がつかなくなるよりは,“ゴールデン・タッグ”を結成して臨むべきと考える。目標は導入企業の数ではなくトラブルを起こさないこと。「アバイア,お前もか」と言われないようにしたい。

 無線LANスイッチのアルバワイヤレスネットワークスやメルー・ネットワークスとも,日本を含むワールドワイドでパートナシップを結んでおり,E61を使った検証はほぼ終わっている。

――モバイル・セントレックスは既にNECなどが手がけており,後発となる。

 アバイアのソリューションには三つの優位点がある。その一つはE61の本体機能も含めた機能の豊富さ。E61はセキュリティに優れており,ワンタイム・パスワードやリモートからの端末管理など,企業が必要とする機能をサポートしている。さらにIEEE 802.11eによるQoSに対応しており,音質などの面でも既存ソリューションにひけを取らないのではないか。音声会議の際に,不審な者に通話を聞かれることがないようあとから入ってきた人を強制切断するような詳細機能も充実させた。

 それから,無線LANと3Gをまたぐ通話のシームレスな切り替えがある。「移動しながら無線LANを使ったIP電話で通話を続け,無線LAN圏外になりかけたらone-X 4.1のメニュー操作で同じ相手に3Gで電話をかけ通話を継続する」ことが可能になる。ユーザーが気づかぬうちに無線LANの圏外になってしまったときには,3G回線でかけ直すかどうかをユーザーに尋ねるダイヤログ・ボックス(メッセージ画面)を出し,すぐにCommunication Manager経由でつなぎ直せる。技術的には無線LANの圏外になったら自動的に3Gでつなぎ直すことも可能だと思う。ただし3Gは通話料金が発生するため,知らぬ間にコストがかかる恐れがある。そこでまずはこうした形を採った。

 そして先ほど説明した通り,Communication Managerの機能を無線LANの圏外でも3Gで利用できること。one-Xはone experienceの略で,ネットワークが変わっても同じ操作で同じ機能にたどり着くことを目指した表れだ。既にone-X 4.1を使ったモバイル・セントレックスのソリューションに対し,主に外資系の10社以上から問い合わせが来ている。