みずほ証券の原告訴訟代理人弁護士である岩倉正和氏
みずほ証券の原告訴訟代理人弁護士である岩倉正和氏
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 みずほ証券の誤発注を巡る第一回口頭弁論が12月15日東京地裁で開かれ、原告のみずほ証券と被告の東京証券取引所(東証)それぞれの主張が明らかになった。

 冒頭、原告訴訟代理人弁護士の根岸重治氏が、訴状の内容を補足説明した。その中で、被告である東証に大きく責任がある点を、主に二つ述べた。一つは、原告が売買システムの操作マニュアルに記載してある通りに取消処理をしたのに取り消しできなかったこと。もう一つは、再三にわたり取り消し処理をしているのに実行されないことについて、電話で被告の担当者に伝えたものの当該担当者が何の措置もしなかったことである。

一方、裁判長から答弁書の内容について質問された、東証の訴訟代理人はその質問に答える形で、「取引所の義務は取引参加者が市場に参加できるようにすること。一つひとつの注文を処理する契約上の義務はない」と述べた。

 裁判後の記者会見に応じた、みずほ証券の原告訴訟代理人弁護士である岩倉正和弁護士(写真)は、「東証が取引の場を提供しているだけで、それぞれの注文処理システムについては何の義務も負わないという主張が通るのか」と疑問を述べた。一方の東証は、「本訴訟については、裁判所に係属している以上、当取引所の主張については、裁判所において粛々と行っていく」(広報)とだけコメントしている。

 争点になっている誤発注は、みずほ証券が2005年12月8日に、同日新規上場したジェイコム株の売り注文について「1株61万円」と注文すべきところを、「61万株1円」と入力したもの。直ちに誤発注に気づき、複数回にわたって取消注文を出したが、東証の売買システムに不具合があり、取消注文が適切に処理されなかった。その結果、売買が成立し結果的に400億円超の売却損が発生した。

 その後、みずほ証券と東証は損失分担に関する協議を、役員間あるいは担当者間で合計10回以上話し合った。この間、東証は取引参加者規程にある「取引参加者が損害を受けることがあっても、当取引所に故意または重過失が認められる場合を除き、賠償しない」といった主旨の記述に従い、重過失には当たらないとして、支払いを拒否していた。みずほ証券は、当事者間での協議による解決を図るのは困難な状況であるとの判断から10月27日、東証が取消処理を行なわなかったことにより発生した売却損とその他諸費用約415億円の賠償を求めた。